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狩り 17

 嫌やぁ、て思った。  やっと見つけた猫殺しの視線になんか・・・嫌なもんがあった。  殺意とかは知ってんのよ。  ガチで殺しに狂ヤツもリングの上にはおるからね。  なんかちゃうねん。  コイツの・・・何故か僕を見る視線、怖いねん。  そういう怖いんとはちゃうねん、  「その子から離れろ。もう逃げられへんぞ」  アイツは猫殺しに怒鳴った。  猫殺しは僕らくらいの年の、可愛い男の子を犯しとった。  鼻血出しとったけど、まだ十分可愛いかった。  指は二本噛み切られ、片耳も噛み切られてた。     うわぁ。  けっこうドン引きするわ、これ。  嫌やなぁ。  僕と違ってアイツは緊張してた。  そして僕に小さな声で囁いた。  「時間稼いでくれ・・・。稼ぐだけでええ。無理や思たらすぐ逃げてくれ。多分アイツ、オレを最初に殺すはずやから。オレの屋敷に逃げてくれ。あそこなら誰にも何にも手出しは出来へん」  アイツは言った。  やれってことやな。  アイツからのお願いや。  僕はやる気になった。  お前がやれって言うなら僕は何でもやるんやで?  そしてお前がやれって言うんなら・・・僕はひかへんよ  僕は俄然やる気になった。    そしてアイツの言う通り、猫殺しはアイツを見ていた。  最初に狙うのはアイツなんや。  可愛いからか。  ん?  まさか、僕の可愛いアイツに劣情を?  可愛い男の子犯してる位や。  こんなに可愛いアイツならなおさら!!  思うだけでも許せんかった。  アイツをヤってもええんは僕だけや。  アイツを想像の中ででも犯したんなら許せへん。  僕はお気に入りのスタジャンを脱ぎ捨てた。      動きやすくする。    そしてやるべきことを始めた。  先手、必勝。     身体を低くして猫殺しに突っ込んでいった。     僕が使ったんは、レスリングのタックルや。  ジムにボクシング習いに来ている、総合格闘家に習った。  軽く習っただけや。  ホンマにやってるヤツや、兄貴みたいな蹴りや膝を使えるヤツに使ったら簡単に返り討ちにあうやろ。  だけど、僕は猫殺しにはこれが通用する自身があった。  猫殺しは今、寄生生物「殺意喰い」のために身体の能力を上げられている。  ものすごく高くジャンプしたり、高いところから飛び降りたり、人間の身体を噛みちぎったりしてる。  能力では僕は叶わないだろう。  でも、それでも、二度も向かい合えばわかることもある。  僕はこれでもボクサーや。  獣や獣や言われてるけど、それでも、ボクサーや。  相手を分析することは最低限はする。   コイツは能力の上がった身体を使いこなしてはいないってことや。  僕らかて、筋力トレーニングで筋力をあげたりする。    でも、つけただけの筋肉はやくにたたない。  練習を繰り返してこその、筋力アップや。  性能の上がった身体を使いこなせる能力あってこその性能アップや  むやみやたらにどでかいエンジン積んでも、それを運転出来る腕や、それに見合った車体がいるんや。    今の猫殺しはスクーターにフェラーリーのエンジンつんだみたいなもんや。  十分、イケる、僕には自信があった。  何故なら猫殺しは遅いとは言わないが、その能力のわりには速く動けてなかったからだ。  僕でも対応可能なスピードで、うごいてた。  確かにすごい力だったり、すごいジャンプだったけれども・・・スピードはそんなにじゃない。  つまり、避けられない。    僕の狙い通り猫殺しはマトモに膝を抱えられ倒れた。  僕はすぐにマウントをとり、反応されるより速く、頭を殴りつけた。  脳を揺らせ。  身体への指令を送る脳を潰せ。    立って、腰を回して撃つパンチなら、一発で素人なら殴り殺せる自信はある。  だけど膝をつけて、馬乗りになって撃つパンチは僕の専門ではない。  でも・・・僕は鍛えられあげた暴力だ。  身体の捻り、肩を使い、体重を乗せて撃つ。  僕の拳は空手家並みに鍛えてある。   ジムで竹藁(空手の拳を鍛えるための竹に藁縄をまいたの)殴ってるんや。  グローブがなくても骨折しない自信はあった。    思いきり殴り続けた。  

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