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狩り 18

 殴れば頭がアスファルトに叩きつけられ衝撃で跳ね返る。  そのバウンドして上がってきたところをさらに殴りつける。    バスケットのドリブルみたいなもんや。  潰れるまで、バウンドさせたる。  僕はアイツか何も言わんかったから、止める気なんてなかった。  やれって言われた。  ほんならやり続けるだけや。  殴った。  鼻が潰れた。  軟骨や、カンタンに折れる。  頬も折れた。   目玉が飛び出そうとしてる。  笑った。  笑った。  僕は暴力が好きや。  暴力を好きなように使うのが好きや。  大好きや。  使うたらあかんのも知ってる。  弱いものイジメなんかもってのほかや。  でも今は違う。    違う。  違う。  笑いながら殴る。      アイツがしてええ言うたんや。  これはええことや。  目玉が飛び出た。    面白くてわらった。  開いた口から折れた歯が飛び出す。  それさえも面白い。  鼻血が、噛み切られかけた舌が口の中からゆれて、口から血を吐き出す。  笑う。  笑う。  笑う。  僕は存分に殴り続けた。  「もうええ!!」  アイツが叫ぶ声が聞こえるまで。  僕は残念な気持ちではあったけれど、拳を下ろすのをやめた。  拳に刺さっていた歯を一本抜く。     猫殺しは顔をぐちゃぐちゃにして、ぐったりしてた。  片目か飛び出し、前歯もない顔は、真っ赤なに染まっていた。  死んだかもな。  僕は冷静に思った。  知らん。  どうでもいい。  僕は笑顔でアイツの方を振り返った。  ちゃんとできたで。  誉めてや。  アイツは真っ青な顔をして僕を見ていた。  アイツといつの間にか出てきた赤と黒は、猫殺しに犯されていた男の子の応急処置をしていたらしい。  アイツは千切れたられた指の付け根を縛って止血をしていた。  赤と黒はその手助けをしながら、心配気にその子の傷をナメていた。  「赤、黒、この子を影の中へ連れて行って。それからもうこれ以上味見はするな。影の中に入れてからも・・・食べたらあかんからな、指一本くらいわからへんやろ、とか思ったらあかんで」  アイツがため息をついて赤と黒に言った。  赤と黒は残念そうな声をあげた。  心配して舐めてたんやなくて、味見やったんや。  コイツらバリバリの肉食やったな、そういや。  「らせのなか」  「らせのなか」  赤と黒は騒ぎながら男の子の身体をふたりで引きずり、影の中に消えていった。  どうやって入んねん。  デタラメにもほどがある。  僕は笑顔で猫殺しをそのままにしてアイツの方へ向かう。  僕、ちゃんとしたで。  猫殺し、もう動かへんで。  アイツの目が怯えたように見開かれた。  そやな。  僕、血まみれやもんな。  怖いやろ。  ちょっと反省する。  「・・・お前」  アイツがかすれたような声で僕に囁く。  血でアイツが汚れるのが嫌なので、触らない。  でも触れる距離まで手を伸ばす。  触ったつもりになれるように。  後で沢山触る。  なめる。  噛む。  その中に入る。    「何でもしたる。お前が言うたら、僕は何でもしたる」  僕は心の底から言う。  わかって?  わかって?  アイツの顔が苦痛のように歪んだ。  「・・・お前は・・・」  アイツが苦しそうな顔をする。  どうしたんや。  どうしたんや。  何でお前が泣きそうなんや。  

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