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狩り 19

 「・・・お前・・・わからんのやな」  アイツは呆然と呟いた。  僕は首を傾げる。  「何を?」  僕が何がわからへんと言うの?  アイツの顔が歪んだ。  苦しそうな顔や。  なんでや。  なんでや。  「お前・・・」   アイツが何か言おうとして、次の瞬間顔色を変えた。    僕はその視線の意味を瞬時に悟る。  僕の背後に何かを見とる。  振り返った。  ユラリと猫殺しが立ち上がっていた。  真っ赤に染まった顔はそのままだが・・・新しい血は流れていないし、飛び出していたはずの目は・・・元に戻っていた。  「・・・回復するんやな」  僕は納得した。  身体の性能が上がっただけではなく、すぐに回復できるのだ。    ニヤリと猫殺しが笑った。  そこには折ったはずの歯さえくっ付いていた。    「頭壊して動けんしてから手足をくっつかんように切り離しておかなあかんのか。斧がいるな」  僕は冷静に言った。  まあ、あるもんでなんとかするしかないか。  僕は再び猫殺しに向き合った。  さて、と、  どうしよ。  またタックルにはいけなかった。  タックルが来るとわかってしまえば・・・例えタックルを切る技術がなくても、人間以上の身体性能でなんとかすることはわかっていた。    さてさて。  スピードと技術は僕のが上。  しかし、パワーと性能はあっちのが圧倒的に上。    最低限そこは頭に入れなきゃ。  猫殺しは笑ってなかった。     血で汚れてはいても、飛び出してた目玉や、折れて凹んだ頬とかがなければ、猫殺しは綺麗な顔をしていた。    僕は思った。    でも男の顔が綺麗でも意味ないな。  と。  ん?  でもアイツの時はそうは思わんかったわけで・・・  ちょっと考えていて気付くのが遅れた。  猫殺しは僕を見ていなかった。  あんだけボコボコにされたのに。  僕は僕を襲いに来ることを想定していた。  痛めつけたのは僕だから。  なのに違った。  だから動き損なった。   猫殺しは遅いわけではない。    あくまでも対応可能というだけで、速いのだ。    猫殺しは僕やなく、アイツを狙った。  待ち構えた僕の横をすり抜けて、猫殺しの身体はアイツの前にあった。  「!!」  アイツの身体がすくむ。  猫殺しが笑う。     デタラメに振り上げられた腕はアイツの頭を砕くだろう。  僕は最短で動く。  こんな時には視界は駒送りになる。  時間が伸びる。  ゆっくりと動く。  速く動いていてもゆっくりに見える。    動け。  僕の身体、動け。  猫殺しの腕をくぐり、アイツと猫殺しの間に入る。    よし。    猫殺しの腕を止めろ。  アイツにこれが当たれはアイツは死ぬ。  僕はその腕を跳ね上げようと左腕を動かした。    パキン  乾いた音と共に時間が戻った。        ドン  僕は吹き飛ばされていた。  後ろにかばったアイツごと。  駐車場のアスファルトに叩きつけられた上、僕の身体が落ちてきて、アイツがうめく。  「・・・大丈夫か!!」  僕は飛び起きながらアイツに言う。    「・・・それはお前の方や!!・・・お前、腕が!!」  アイツが心配気に叫ぶ。    僕が心配なん?   そんな声、可愛いわ。  僕は左腕から血を滴らせながらにやける。  でもまずいな、コレ。  僕の左腕は猫殺しのたった一撃で折れて、骨は肉を破って外にでていた。  ヤバいなコレ。  

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