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狩り22
猫殺しの白い手が僕の顔を挟みこむ。
白い身体がこすりつけられるようによせられた。
僕は動かない。
アイツが僕を見てる。
見てるだけや。
声さえたてん。
「俺には分かる。あんたと俺やったらスゴイセックス出来る。何してもええんやで?」
背中に手がまわされて、背中を撫でられる、
指が快楽をさがしてる。
指がセックスしたいと飢えている。
いつも怯えるように逃げるように動くアイツの指を思った。
感じすぎて逃げようとする身体の指を掴んでひきよせた。
怖がって震える指を舐めた。
快感に怯えきって、しがみつく指を握った。
そんな指とは違って、猫殺しの指は快楽を貪りとろうと動く。
「スゴイセックスしよ」
囁く声さえセックスや。
コイツは僕を満足させてくれるやろ。
セックス的に。
僕はコイツを嵌めながら、喰い殺すかもしれん。
だけどそれはコイツもそうや。
僕を喰い殺すかもしれん。
二匹の獣が、喰らい合いながらする、暴力的な血みどろのセックスや。
そえいうの・・・したくないかと言えば、嘘になる。
僕はアイツを見た。
猫殺しの腕の中からアイツを見た。
アイツは震えるだけで何も言わない。
言おうとしない。
いつも、逃げる身体を思った。
めちゃくちゃきもちええようにしてんのに、コイツは逃げようとする。
腰振ってるくせに、なきながら「無理」って言う。
「許して・・・許して・・・」
一番ええとこで泣き叫ぶ。
どんなに抱いても快楽には落ちへん。
コイツが僕とセックスするのは僕が好きやからや。
何でもさせてくれるのも僕が好きやからや。
僕の為やったら、命も厭わんくせに。
僕のためやったら死んでくれるくせに。
何で、何で、何で。
何も言わんの。
何で、師匠や兄貴の前に「コイツに触るな」って飛び込めるのに、今は見てるだけやの。
僕は腹が立った。
猫殺しが甘く笑った。
赤く熱いその中を容易に連想させる唇が、微笑みの形のまま僕に近づいてくる。
その中は熱いだろう。
舌が溶けるだろう。
アイツの舌みたいに怯えて逃げたりしないだろう。
ドロドロに溶け合うだろう。
それがわかった。
僕はアイツを見つめた。
欲しかった。
僕がお前を思ってるみたいに、お前も僕を思って?
僕を渡せへんて言うて?
アイツは何も言わない。
何も言おうとしない。
嘘やろボケ。
マジかいアホが。
ええんやな。
ええんかい!!
「このアホが!!」
僕は怒鳴った。
マジでキレてた。
膝が鳴った。
僕は猫殺しの睾丸をつぶしていた。
猫殺しは声さえ出さずに倒れた。
そら、そうや。
「アホ。猫殺して喜ぶようなヤツと誰がするかい、気色悪い!!お前なんかに勃つわけないやろが」
僕は猫殺しに吐き捨てた。
倒れた顔を踏みつける。
また顔が折れたやろ。
そんなんはどうでもいい。
僕は怒りに燃えながらアイツのそばへ行く
僕は折れてない手でアイツの襟元を掴んだ。
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