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狩り25

 先に動いた。  滑らかな身体のブレのないステップは素人にはいつ動いたかの感覚を狂わす。  相手の呼吸の隙間に入るのだ。  ほら、猫殺しは今、僕のパンチの届く距離。  本来なら鋭いワンツーを撃ち込むべきだが、左がやられているから僕は右のストレートだけを放つ。  構えた場所からそのまま真っ直ぐに撃つストレートだ。  素人なら、いつ撃たれたのかもわからないだろう。    僕らのパンチは銃を構え引き金を引くより速く相手に届くモノだ。  猫殺しの鼻を真っ直ぐに撃ち抜いた。  軟骨が潰れる。  頭があがったとこを、さらに踏み込み今度は腰を入れて右を撃ち下ろす。  右のダブルや。    猫殺しは崩れ落ちた。  でも、きかん。  効くわけない。  睾丸潰しても、回復してくるやつや。  僕は馬のりになり追撃しようとした。  猫殺しは跳ねた。  僕が腹筋で起き上がったヤツの強化バージョンやった。  数メートル跳ね上がる。  コイツ、自分の身体の使い方が分かってきとる。    僕は舌打ちした。  身体の性能は相手の方が遥かに上なのだ。  まともに動けたなら、僕が勝てるはずもない。  僕は相手の分かっていないところを上手く利用しているにすぎない。  本来、叶う相手ではない。    高く跳ねあがった猫殺しは、あっという間に距離をとってしまった。    僕は内心焦る。  近くの距離だからこそスピードは関係ないとことがあった。  接近戦はヨーイドンのスピード勝負だけではない。  読み合いや予測でやれる幅がある。  でも、距離があけばあくほど、距離を詰めるスピードが鍵になるのだ。  ただ、コイツがまず僕を動けなくすることに確信はあった。  猫殺しは本気や。  コイツはもう次のことや、この後どうしたらええとかも考えてへん。  ただ、自分のしたいことをしているだけや。  僕とアイツを乱暴に犯し、殺したいだけや。  その言葉に嘘はあらへん。  それはそれで嫌やけどな。  少なくとも、僕が動けんなるまではアイツは無事や。  まず、僕を動けんしてから、そんな僕の前で猫殺しはアイツを犯しなが殺したいんや。  つまり、僕が動ける限り、アイツは無事や。  それなら・・・なんとかなるやろ。  なんとかしなあかん。  僕は数メートル先にいる猫殺しを睨みつけた   猫殺しはうっとりと僕を見ていた。  嫌。  なんか嫌。  なんか分かってきたんやもん。    僕がアイツに考えているようなことより、酷いことを僕にしてるとこ想像しとるんや。  嫌や。  絶対。  やめて。  セクハラ反対!!  「あんたが欲しい」  猫殺しは言った。  甘く聞こえる声だけど、僕はゾッとした。  欲しいだけなのだ。  欲しいのは僕の肉体と僕の苦痛だけなのだ。  いや、僕の人格さえ、踏みにじるためだけに欲しいのだ。  「嫌やね。僕は愛しかいらんのよ。苛めて苛めて、泣かせて泣かせて、とことん甘やかすんやん。お前みたいなんいらん。キモイ。嫌。優しい優しい子が好きやねん」  僕はじりじりの近づく。  近づくのを気付かせないように。  この距離では絶対に猫殺しをとらえられない。  向こうの方が速いのだ。  本来は。  「あんたの気持ちなんかいらん。あんたが俺に優しいしてくれるなんて思ったこともない。母親さえ愛さない人間を誰が気にかけんねん。誰にも気にかけられたことなんかないわ」  淡々と猫殺しか言った。  何故かアイツがその言葉に息を飲んだ。  お前・・・、どうしたんや。  猫殺しのことでこういうのが何回かあったな。  後で聞かな。  「あんたは身体と苦痛だけ俺にくれたらええんよ。大丈夫、絶対イカセてあげるから、苦痛だけやないで?いや、苦痛もセックスになれば快感になるんはあんたも知ってるやろ?」  猫殺しはじりじり距離を詰める僕に、気付かない様子でささやく。  高架下の駐車場には、ライトが取り付けられていて、それが妖しく猫殺しを照らす。  血塗れの美しい少年を。  僕は僕に酷く突かれながら、悲鳴をあげながら、それでもイクアイツを思った。  苦痛を快楽に無理やり書き換えてそれに溺れるアイツを。  めちゃくちゃクるわ。    「・・・自分がされるんはごめんや」  僕は正直に申告した。    痛いん嫌い。  「はぁ?」  何故かアイツがキレた。  「ええやん。もう痛いのとか好きやろ?お前」  僕はブツブツ言う。  「はぁ!?」  なんかさらに怒ってるけど、まあええって。  最終的にはお前「イイ」って泣きながら言うやん。  言わせてるけど。  その間にも距離は詰めれていく。  「ふふっ」   猫殺しは友達同士が話してるみたいに笑った。

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