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狩り26
「俺はあんたを好きにするんや、あんたの気持ちなんか気にせぇへん。楽しいなぁ・・・ええなぁ・・・誰かの気にさわるんやないか思うて、小さなって、目立たんように息して、それでも嫌われて厭われて。消えて欲しい思われても、消えられへんくって。もうそんなんせんでもええ。めちゃくちゃ幸せや」
猫殺しは楽しそうやった。
血に汚れた顔は本当に楽しそうに笑う。
はじめて出会った時の不気味さは消え失せて、まるで友達と遊んでいる少年のようやった。
その顔は血に汚れていたけれど。
白い裸の上半身は淫らなセックスの残り香をのこしていたけれど。
「殺したかったら、あんたも俺を殺してええんやで?・・・殺せるんやったらな」
猫殺しは駐車している車の一つに手をかけた。
僕は気づいた。
僕もじりじり距離を詰めていたけれど、猫殺しもまた少しずつ移動していたのだ。
猫殺しは車の側にいく必要があったのだ。
猫殺しは止まっていた車の運転席側のドアを殴った。
グワン
乾いた音がした。
ドアはダンボールで出来ていたみたいだった。
その腕はドアを貫通していた。
グワッ
鉄が千切れる音がした。
さらに猫殺しはその穴に手をかけて、ドアをもいだのだ。
そう、もいだのだ。
手で車のドアを千切ったのだ。
「嘘やろ・・・デタラメにも程があるわ・・・」
アイツが呻いた。
「下がっとけ!!」
僕はアイツに怒鳴った。
アイツは大人しく従った。
僕から離れる。
走ることもマトモに出来へんアイツはおるだけで邪魔や!!
それはアイツも分かってる。
猫殺しはまず僕を狙う。
それも分かっている。
猫殺しは空き缶を投げる位のノリでドアをこちらに投げて来た。
僕は飛び退く。
ガラスが砕ける音、プラスチックの部品が飛び散る音、ドアが曲がる音が響く。
僕が立っていたアスファルトにドアはめり込んでた。
凄まじい力やった。
コイツ、さすがに身体の使い方がわかり初めてきたんか。
「殺したらあかんからな、自分でよけてや」
猫殺しは楽しそうに笑った。
猫殺しは・・・ドアをもいだ車に手をかけた。
そして、片手で持ち上げた。
軽々と車は紙で出来てるみたいに持ち上げられた。
・・・・・・マジかいな。
ふざけすぎやろ!!
楽しそうな笑い声と共に、車が飛んできた。
ふざけて友達にボールをぶつける位の気軽さで、車は飛んできた。
グアガツン
衝撃音か響く。
先ほどのドアの音など比べ物にならない。
ふざけんなふざけんな、こんなデタラメあるかいや!!
僕はもちろんよけた。
衝撃音と共に、振動があった。
空気が揺れた。
地面が揺れた。
車は半分潰れていた。
オイルやガソリンがもれ出していく。
当たれば即死。
ふざけんな。
駐車場やぞ。
コイツの武器だらけやないか。
こっちは素手で片腕やのに。
「男らしく素手で戦えや!!」
言うてみる。
みるだけな。
「男らしくって、学校の男子皆の公衆便所にされとった俺に言うん?」
不思議そうに言われた。
ああ、そうですか。
そうですね。
でも、コイツは僕の身体が欲しいわけやから・・・。
「頑張って・・・よけてなぁ。死体とする趣味はないねん」
猫殺しの声。
ガシュッ
千切れる音。
そして・・・・またドアが飛んできた。
クガッ
飛び退いた場所にまたドアがめり込むり
違う車のドア、もいでる・・・。
僕は避けれる。
避けること自体は難しいことやない。
問題は僕が出血してるってことや。
ただでさえ今月、白に沢山血をとられた身体や。
長くは・・・もたん。
意識を失う。
おそらく、猫殺しはそれを狙ってる。
もっとも、意識が無くなる前のよわりきったとこを狙うやろ。
意識なくなったら、猫殺し的にはおもろないやろからな。
うーん。
実は本当はもう限界やったりするんよね。
ガシュッ
また、ドアが千切られる。
距離を詰めることも出来へんわ、相手は飛び道具(車)を使ってくるわ・・・・。
また飛んできた。
ああ、もう!!
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