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狩り30

 その間にも、兄貴はなんとか鎮火に成功していた。  それは、焼け焦げた猫殺しをすこし元気にしたみたいだった。  焼け焦げた肉体がゆらりと立ち上がった。  もう嫌や。  怖いやん。   ゾンビみたいなもんやん。  こんなん嫌い。  「マジか」  兄貴が呻く。  コイツもホンマは大概な恐がりなん僕は知ってる。  プライド無駄に高いから隠しとるけどな。  兄貴も後退る。    「金なら出す。コイツの手足をきりとるんや」  アイツが師匠に言った。  「お前らが欲しがってた本もつける。なんならタカアキからも余計に貰えや」  偉そうにアイツは言った。  目上の方やでぇ。   一応。  「毎度おおきに!!」  師匠は下手くそな関西弁で言った。  その場の関西人全員から冷たい目で見られ、ちょっと拗ねた顔をした。  だけど次の瞬間、師匠は消えていた。  いや、消えたんじゃない。  僕らは同調していた。  異常な状況下で、呼吸がリズムが同調していた。  僕もアイツも。  兄貴も師匠も。  もしかしたら猫殺しも。  師匠は皆が瞼を閉じる、瞬きの瞬間に動いたのだ。    それはまるで消えたように見えた。    そして、おそらく猫殺しは師匠を目で確認したその瞬間に両手両足を根本から切断されていた。  師匠がいつ刀を抜いたのか、いつ切ったのか・・・僕にはわからなった。  僕が分かった時には刀を鞘に納める師匠と、斬られた両手両足と共に地面に猫殺しが転がっていた。  猫殺しには尚更だろう。  兄貴でも・・・分かったかどうかわからない。  くぁぁがぉ!!    両手両足を失った黒こげの身体は地面に転がりながら吠えた。  兄貴が汚そうに猫殺しの両手両足をどっかから出しできたゴミ袋に回収していた。    「両手両足はコイツが取り返さないようにどこかに隠しておいてな」  アイツは言った。       師匠は笑って頷いた。  「請求書はまたおくらせてもらう」  師匠は値段も言わずに言った。    これは高こつく。  この人は金の亡者や。    「わかった」  アイツは値段も聞かずに頷いた  いいん?  いいん?  ふっかれられるで。  アイツは自分の影に向かって声をかけた。  ぴょこ。  影から黒い毛につつまれた腕だけか出て来て、本をアイツに渡した。  黒の腕や。  この本。  師匠達が欲しがってたヤツか。    「持ってけ」  アイツは黒の腕からそれを受け取ると、師匠に投げつけた。  一応目上の方やでぇ・・・とは思うがコイツは筋金入りの傲慢やからな。  師匠はアイツの態度は気にせず、それを受けとった。  師匠には金が全てだ。  「どうも。・・・で、弟くん、君の恋人ってこの子だろ?」  師匠は本をどうでも良さそうにめくりながら、さらりと言った。  「はぁ??」  叫んだんは兄貴やった。    猫殺しの両手両足をゴミ袋に入れて持ちながら、こちらを思いっきり振り返っていた。  「そうや。僕の恋人や」  僕は胸をはって答える。  「恋人?はあっ!?」   今度は何故かアイツが叫ぶ。  なんでやねん。  お前と僕の関係なんやねん。  「オイお前、コイツ男やぞどう見ても!!」  兄貴が喚く。  「問題ないし兄ちゃんには関係あらへん」  僕は言い切る。  何故かアイツが青くなってる。    何でそんなに汗だくになってんねん。  兄貴は片手に両手両足いりのゴミ袋を持ってとんできた。  アイツの前に立つから、僕は慌ててアイツをひきよせる。  兄貴は信じられないといったような目でアイツを見つめてる。  「・・・そんなにええんか?」  兄貴が声をひそめていった。    「はい?」  僕は聞き返す。  「男とやったことはないけど、男とするんは具合がええんか、そんなに。女よりええって聞いたことあるしな。そんなにええんかコイツのケツは。締まるんか?絞ってくれるんか?」  兄貴は最低な言葉を言い放っていた。  そうや。  コイツはゲスの極みやった。  こういうヤツやった。  「一回オレにも試させてくれや。コイツよりセックスうまいぞ。めっちゃめちゃ気持ちようしたる」  そんなことまでアイツに言いよった。  しかも真剣に。  弟の恋人やぞ、このゲスが!!  アイツは怒る前に驚きすぎて目を見開いとる。  兄貴のゲスさに声も出ないのだ。  驚きのゲスさやからな。  「黙れゲス兄貴!!」  僕は怒鳴った。    師匠は笑ってる。  「ゲスだよなぁ・・・弟は獣で兄貴はゲス。妹ちゃんはあんなに可愛くて、お姉さんはあんなにいい女なのに、最低だよなお前ら兄弟」  師匠に言われた。  「姉ちゃんには手ぇ出すな、師匠」   僕。  「姉ちゃんには関わらないでください師匠」  兄貴。  ほぼ同時に言っていた。  師匠はあかん。  絶対に姉ちゃんに近付けたらあかん。  僕と兄貴の意見はここでは一致していた。  「お前ら仲良しじゃないか」   師匠はため息をついた。  

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