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Ⅳ 俺はあなたを呼び捨てない⑫
俺は……
俺はァァァ……
αの性器を触ってしまった。
しかも半勃ちの……
ぐすん。
「真川さん……」
「なんだ?」
「もう離していいですか」
そして、俺は今も真川さん自身を握っている。
「そうだな。『騒ぎを揉み消す前に、騒ぎにならない選択をすべきだ』という君の意見を尊重しよう」
「ありがとうございます……」
俺はなぜ、性器を握ってお礼を言っているのだろう……
ぐすん。
「感想は?」
「………」
「感想」
「………」
はい?
「俺の性器を握った感想だよ」
「ありません!」
「なにか言いなさい」
怒るな。
怒ってはいけない。
真川さんは悪くない。
これは優れた生殖能力を誇るα特有の習性なんだ。
(………)
(………)
(………)
あぁ、真川さんの視線が痛い。
目がキラキラしている。
『特命!Nightジャーナル』の局長の時でも、こんなキラキラの目、見た事ないよぅ~。
「えっと」
「うん!」
期待されている。それも、めちゃくちゃ。
「………………剥けてました」
「αなら当然だが、君がカリ高剥けちん好きならそれはいい事だ」
真川さんの目が冷静だ。俺、がんばったのに。うぅっ。
ここは、大きさを褒めてあげるべきだったのか。
太さとか、長さとか!
それとも根元の袋の重量感か!
(無理だ)
俺はΩだ。αの性器に対する自尊心なんか分からない!
あと、俺は剥けち……剥けてるのが好きだとは一言も言っていない。
(なのに、剥けち……ん好きにされてしまった)
おまけに『かりだか』なるオプションまで追加されてる~。
ぐすん。
「泣くな」
「泣いてません」
「泣いているだろう」
チュッ
(えっ)
今、目尻に触れたのは……
「まさか君は、ここへのキスも禁止だとは言わないだろうな」
目元に滲んだ雫を舐めたのは、真川さんの!
(舌)
「こら、暴れるな。君はまた、俺にコーヒーを掛ける気か」
いつの間にか。真川さんの膝の上に座らされて……あ、俺を包む腕が逞しい。
俺、真川さんに後ろ抱きにされている。
右の手はコーヒーをこぼさないよう、手首を握られている。
「動くなよ。上手く涙が拭えない」
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