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Ⅴ 仕事に行かないなんて言わせない②
「あのっ」
お、お、お、俺!
「どうした?」
「打ち合わせに来たので」
「それで?」
それで……って。
「打ち合わせは終わったんだろう」
チュッ
「ひゃ」
まただ。
また、真川さんが!
「どうした?」
宵闇の玲瓏が覗き込む。
「顔、赤いぞ」
「だって、キス!」
「あぁ」
「ひゃあっ」
また!
不意打ちで!
「ズルい」
あなたは。
「ズルいのは君だ」
低音が耳朶を掠める。
「俺は君のどこに触れればいい。どこに触れたら、君は喜んでくれる?」
端の掠れた声に耳を食まれる。
ズルいのは、やっぱりあなただ。
そんな質問……
(俺から触れてって)
……そんなの、言えない。
「言わせたい。君から俺に触れてほしいと」
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