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Ⅴ 仕事に行かないなんて言わせない⑦

「明里君?」 「……えっ」 「大丈夫か?急にぼうーっとして」 「は……い」 いま、声が聞こえたような? (俺の気のせい?) 目の前にしゃがんでいる琥珀の瞳は、憂いの色で俺を見つめている。 「心配だな」 トクトク、音が聞こえる。 これは俺の心臓の音なのか。 陰を落とした琥珀の玲瓏から抜け出せない。 「慌てているのかと思えば、急にぼうっとして。疲れているのかも知れないね」 手が伸びてきた。 指先まで繊細な手が…… この人は、一挙手一投足に至るまで何もかもが秀麗だ。 何もかも綺麗な手が近づいてくる。 動かなければ。 なのに、動けない。 じゃあ、せめて何かを言って…… この手を止めないと。 じゃなけりゃ、俺は…… 「あのっ」 この後、なにを続ければいい? なにか言ってください。葛城さん。 言ってくれたら答えられる。 言ってくれないと、言葉が続かない。間がもたない。 息もできず、呼吸も奪われる。 葛城さんも、もしかして……… ( α ) 「遅いよ」

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