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Ⅴ 《おまけ+》淋しい熱帯夜【THE FINAL①】

「もうウィンクしませんか」 「たぶんしません」 「たぶんじゃダメです」 「おそらくしません」 「おそらくもダメです」 反省してないな。このα 「しないと誓いますか」 「愛を誓います」 「~~~」 反省しろ!アヴァンギャルド王子α 「とにかく!無闇にウィンクしないでくださいね」 変な汗かいたよ、俺。 真夏の夜でもないのに。 「そうだね。ウィンクはしない」 ほどけた手と手の間から、あなたの素顔がのぞいて。 一瞬。 琥珀色の瞳に気を取られた刹那、手が手に絡められる。 「ウィンクしない代わりに、キスするよ」 俺の手が再び、葛城さんの手に繋がれている。 「いいかい」 トクン、トクン 鼓動が音を立てて、左胸を突き破る。 ふわりと鼻孔を香りがくすぐった。 トクン、トクン 葛城さんの吐息が前髪に降りた。 握ってくれている手があたたかい。 力ずくじゃないから、振りほどこうと思えば今すぐにでも振りほどける。 俺、なにしてるんだろう。 このままじゃ………… 「ダメです……」 フウ……と頭上、吐息がそよいだのは溜め息なのか微笑みなのか。 「わかった」 ごめんなさい。 そう思っているのに、口に出かかったところで言葉につまずく。ごめんなさいと思っている。なのに。 「いいよ」 ふわりと声は舞い降りた。 「無理に言わなくていいんだ。無理に気持ちを押し出さなくていいんだよ」 君の気持ちは、君のものだから。 あなたは優しくて…… ポンポンと髪を撫でて頭に置かれた手に、心が落ち着いて…… でも。 「君に、そんな顔をさせたいわけじゃないんだ」 (あなたの綺麗な瞳を曇らせている原因) 「俺があなたを困らせているんですね」 何を今更、言ってるんだろう。 そんな事を聞いて、今更何になるのだろう。 俺は…… (俺の苦しみから) 逃げたいだけ。 「俺は、君の逃げ場所になれているかな」 頬を温もりが包んだ。 「顔をあげなさい。君はもっと私を困らせる気かい」 「そんなことっ」 言葉は最後まで伝えられなかった。 でも、気持ちは伝わったかも知れない。 「この場所」 秀麗な指先が唇をなぞった。 「もう少しでキスしそうになってしまったよ」 柔らかな琥珀の眼差しが降り注ぐ。 「……葛城さんを困らせてごめんなさい」 「いけない子だね。君は。私をこんなに困らせて……でも悪い気はしないんだ」 不思議な気分だ。 君に振り回されて…… 「いつか君の居場所に私がなれたらと思っているよ」 フフっと吐息の中に微笑が灯った。 「そんな顔をしていると、将来を待たずに今すぐ君をかっさらってしまうよ」 「葛城さんっ」 「冗談だ」 あなたの目は曇りなく、澄んでいる。 「ほんと、君には手を焼かされるよ」 だが。 「君に困るのも男の甲斐性だ」 葛城さんは、やっぱり王子様だ。 いちいち、かっこいい。 (………………ん?) 包まれるように抱き寄せられて、なにかが当たったような?

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