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Ⅵ 《おまけ+》3倍しろォォォー!【前編】
葛城さんが、やって来た……
一ヶ月ぶりだ。
足しげく通ってくれる葛城さんにしては、少し日が空いていた。
久し振りに来たかと思えば、今日は連れを連れている。
(雨が降るかも知れない)
いや、雪かも知れない。
そうじゃない。
(槍だ)
明日は槍が降るぞ!
いつも一人で来る葛城さんが、誰かと一緒だなんてェェェーっ
あの人は群れない。
柔和な笑みで人当たりも良いけれど、あの人は決して群れたりしない。
自分のテリトリーに誰も入れない人だ。
否。
(あの人のテリトリーには誰も入れない)
柔和な笑みは鏡のようなもので、光を反射する。
踏み込むな、と……
鋭い微笑みが拒絶するんだ。
(なのに、あの人!)
たまに来てぷり鮭弁当を買っていくあの人……
(なんの躊躇もなく、葛城さんのテリトリーに踏み込んだァァァーッ!!)
『銀や』でバイトを初めて早三年。
葛城さんが、この店に通い始めて二年。
「晴天の……霹靂 だ……」
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