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Ⅵ 《おまけ+》3倍しろォォォー!【中編】
「はーい、ただ今」
葛城さんに呼ばれてオーダーを取りに行ったけど……
(なんなんだ)
この、ほわほわオーラはァァァー!
僕はβだ。
βにαのオーラは見えない。
(本来ならば)
なのに、今。
(僕にもはっきりと見える)
葛城さんのほわほわオーラが。
あの葛城さんが……
(腑抜けている!)
「三谷君、こっちにもお茶とおしぼり」
「はい」
「オーダーは……」
「ぷり鮭定食」
(この子ほんとう、ぷり鮭好きだよな)
たまに来て、ぷり鮭弁当をにこにこ買ってくれるから覚えている。
きっと幸せそうに頬張るのだろう。
僕も幸せになる笑顔だ。銀やの店員冥利に尽きるというものだ。
「あと、いつものを頼むね」
「かしこまりましたー」
……と、応えたものの。
(なにかおかしくないか?)
銀やバイト歴3年。
僕の経験が違和感を訴える。
葛城さんの『いつもの』は『ぷり鮭定食』だ。
『ぷり鮭定食』以外のものを注文した事がない。葛城さんにとって『ぷり鮭定食』は、それだけお気に入りだ。
(『ぷり鮭定食』を頼むんだったら『私も同じものを』……で良くないか?)
なんだろう?
銀やバイト歴3年の直感が警鐘を鳴らしている。
『いつもの』は『ぷり鮭定食』で間違いない。
だが。
今……
(葛城さんの言う『いつもの』は『ぷり鮭定食』でない気がする)
確証はない。
しかし……
ドキドキ
ドキンッ、ドキンッ
心音が訴えるんだ。
なんだ?このプレッシャーは。
(間違えられない)
鼓動が打ち付ける。
拍動が戦慄を刻む。
(万が一、間違えたら……)
俺に未来はない。
「まさか『いつもの』で分からないなんて言わないよね。三谷君?」
背後にたたずむ、αの影の恐怖が拍動ごと心臓を鷲掴んだ。
「ヒャアアアァァァァーーー!!!」
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