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Ⅵ 《おまけ+》3倍しろォォォー!【後編】
ヒィィィィィー!!
一体いつから立っていたんだ。
不覚だ。
銀やバイト歴3年の僕ともあろう者が、お客様に後ろを取られてしまうなんて!
通る時は『後ろ、通ります』……って言って下さいね。
衝突事故を未然に防ぐ鉄則だ。
……って、そうじゃない!
「葛城さんッ」
オーラが尋常ではない。
「なぜ、ここに」
にっこり微笑んでいるけれど。
「心配性なんだ」
目が笑っていない。
「『いつもの』分かってるよね」
さっきまでのほわほわオーラはどこ行った?
(色が黒い……)
α同士にしか見えないというαのオーラが、βの僕にもはっきり見える。
目の前に立つ秀麗な面立ちの彼を包むオーラの色は、底のない闇。
光さえ届かぬ、深海の暗黒だ。
「言ってみたまえ。私の『いつもの』はなんだい?」
言葉こそ丁寧だが、琥珀の瞳の刹那に見せる煌めきが鼓動の芯を突き刺す。
王子などという形容は甚だしい。
(今、目の前にいるのは……)
魔王
「どうした?私の『いつもの』を言ってごらん」
琥珀の双眼が責め立てる。
心臓がキリキリ痛い。
この人は間違いなく、αの魔王だ。
「……ぷ」
違う!
『ぷり鮭定食』と言ってはいけない。
明らかに魔王の眉間がピクンッと跳ねた。
『ぷり鮭』でなければ、魔王の好物はなんだ?
『ぷり鮭』以外を食べている魔王を見た事ないぞ。
「やはり、ここへ来て正解だったみたいだね」
微笑みさえ冷冽 だ。
「三谷君。君にはいつもお世話になっているから教えてあげるよ」
口許が弧を描いた。
「今が旬の物だ」
その形良い唇が艶やかに開く。
私が所望するのは…………
「ボッキ貝定食だよォォォー!!」
「あるかァァァァァーッ!!」
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