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Ⅷ 君には渡さない⑧
ホテルとは恋人達の聖地だ。
今、俺は禁断の聖地に足を踏み入れようとしている。
否!!
足、付いてないからっ
俺、伝説のお姫様抱っこされてるからァァァ~
「真川さん、待って」
「ダメだ。時間が惜しい」
真川さん、もうそんなにいきりたってるのか。
……チラっ
(うわあぁぁ~)
なに俺、垣間見ようとしてるんだよっ。もうっ。
……って、そんなことしている場合じゃない。
「心の準備がッ」
「心の準備は要らん」
「俺には要ります」
「必要なのは覚悟だ」
覚悟って。
「失礼な!」
そりゃ俺は、真川さんにとって『面白い顔』かも知れないけど。
「わっ、暴れるな!」
「真川さんとは入りません」
「怒っているのか」
「怒ります!」
俺は、覚悟を決めて愛を育まなければならないほど面白い顔じゃない!
バタバタバタッ
「危ない!落ちるだろうがッ」
「落としてください」
バタバタバタッ
「落とせるか」
ガシィっと、屈強な腕に俺の身動きは封じられる。
厚い胸板に顔をうずめるよりほかない。
「うう~。真川さん、苦しいです」
「暴れる君がいけない」
俺が悪いけど、俺は悪くない。
「暴れるな」
「苦しいですってば」
「聞く耳持たん」
「持ってください」
暴君αめ!
「時間が惜しいと言ったろう」
本当に俺の声には聞く耳を持たずに、スタスタ長い脚が歩みを進める。
「ちょっ、俺はまだ!」
同意していない!
「大人しくしろ。本当に時間が足りないんだ」
足りない……って。
『ご休憩』時間が、か?
(この人★)
一体どんなネットリプレイをする気だ……
「フンガアァァァーッ!!」
「どうした?落ち着け」
「落ち着けません!!」
落ち着いたら、真川さんのじっとりネットリ焦らしプレイの餌食になるゥゥー★
「君の装いも何とかしなければな」
(それって……)
まさか★
(コスプレ……)
バニー
高校生
お医者さん
ナース
スクール水着
競パン
メイド
天使
ポリス
……『逮捕しちゃうぞ♥』
(真川さんが逮捕されてしまうー!)
誰もが知る有名人だ。
知名度のある真川さんがコスプレで、公衆の面前で淫行なんて、逮捕は免れないぞ。
「ここ、ホテル!」
思いとどまってくれ、真川さん。
「ホテルなんて生易しいものじゃない」
ひらり。空から落ちた宵闇の瞳が、深く、深く、鼓動の深奥を突き刺した。
「俺達の向かう場所は、戦場だ」
(あなたは)
真川さん……
由緒ある五ツ星帝都ホテルで、一体どんな猥褻ハード絶対王政プレイをする気だァァァー★♠★♠!!
(ムッツリスケベ帝王αァァァァー!!)
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