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Ⅸ 君には渡さないpartⅡ ②

なんか…… (気まずい……) わだかまりの壁がある。 とても居心地が悪い。 どうしよう。 意地を張ってしまった。 『俺の気持ちも考えてください』って言ってしまった。 伝えた言葉に嘘はない。けれど…… 伝え方は、ああじゃない。 (少し、怒ってるよ) 俺だって。 でも、怒ってるのは少しだけ。 気持ちを考えてほしいと思ったのは、俺を知ってほしかったから。 (俺の我が儘) 嫌いな人に我が儘は言わない。 なのに。 拒絶したみたいに、言ってしまった…… 少し、寂しそうな声だった。 『すまない』って。 そう答えたあなたの顔を見られなくて、目を伏せた。 真川さんの声。 あなたの声だけが、頭の中をグルグル回る。 上手く返す事ができなくて、俺は黙ってしまった。 真川さんに悪い事をしてしまった。 もう真川さんは俺に触れてこない。 「こっちだ」 真川さんに促されて会場入りする。 「しっかり、顔を上げてくれ」 「そうですね」 俺は、あなたの助手だ。失態は許されない。あなたの顔に泥は塗れない。 下を向いていては歩けない。 人にぶつからないように。 周りにも気を付けて、注意を払って…… 「わあっ!」 これは、なんだ★ パンにご飯に寿司、カレー、スープにパスタ、刺身、ステーキ、ハンバーグ、サラダバー、ローストビーフ!! 瞳に飛び込んできた視界一面の料理の数々に、思わず感嘆の声が上がった。 洋食、和食、中華。色とりどりのありとあらゆる各国の料理が、ところ狭しと居並ぶ。 どれも全て五ツ星ホテルの世界トップレベルのシェフによる、最高級食材で調理された品々だ。 「勉強会が始まるまでは立食パーティーになっている」 「これ、全部食べていいんですか」 「さすがに全部は食べられないだろう」 フフっと真川さんが笑った。 この量だ。 俺、食いしん坊みたいで恥ずかしい。 「優斗はなにが食べたい?」 取り分けようとしてくれた真川さんの皿に手を伸ばしたが、ひょいっとよけられてしまった。 「君は皿が食べたいのか」 「そんなわけないでしょう!」 そうじゃなくって。 「俺は……」 「なんだ?」 「俺……だから」 「どうした?聞こえない」 この大人数が会場入りしているのだ。周囲のざわめきで、真川さんに声が届かない。 「優斗?」 言わなくちゃ。 今、言わないと。 気持ちが真川さんに届かなくなる。 「俺、許嫁だから……あなたに料理を取り分けたいです」

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