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Ⅸ 君には渡さないpartⅡ ⑤

「諏訪会長も来るんですか」 「さぁ、どうだろうな。あの人はなかなかの怪物だ。『夜の(とばり)で策を巡らし、千里の彼方で勝利する』などと言われているしな」 「張良(ちょうりょう)ですか」 「詳しいのか」 「はい、三国志には少し」 「違うな。時代、間違ってるぞ」 知ったかバレた★恥ずかしい~ 「秘書に、劉邦(りゅうほう)に仕えた強力な参謀・張良がいるのか、会長自身の事を言っているのか分からない。選挙戦の例えにしては少々物騒だと思ってな」 テーブルに置かれた水を口に含んだ。 「『夜の帳』……」 「えっ」 「なんでもない。政界には黒い噂がつきものだ。権力者となれば、その噂も大きい」 ふぅっと息を吐き出した。 「君は大人しく見学していろ。ここには、ここのやり方がある。守るよ」 「はい」 この人は不意打ちで、俺の心をくすぐってくるんだ。こんな時も。 「さて、そろそろ時間のようだな」 司会者が登壇した。

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