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Ⅸ君には渡さないpartⅡ ⑪
ペンの飛んできた方向を振り返るが、そこにはもう人影はない。
「何をしている!Ωを拘束しろ!」
一斉に警備員達が襲いかかってきた。
真川さんに手を伸ばす。
周囲の警備員を殴り飛ばして、真川さんの手が俺に伸びる。
指先が触れる刹那。
引っ張られて、引き剥がされ、羽交い絞めにされて、俺達の手は届かない。
「優斗ッ」
もう、その場所に行けない。
真川さんに……
あなたに触れられない。
あなたが遠く、遠く。離れていく。
声だけがぽっかり、広い場内に響いた。
「ようこそ、発情Ωさん」
警備の男達によって、壇上に無理矢理上げられた俺に、司会の男は冷たい眼光を落として酷薄な笑みを作る。
「あなたは大切なguestです。歓迎しますよ」
会場が異様な空気に包まれている。
政治家の勉強会の雰囲気でないのは明らかだ。
「皆様、長らくお待たせいたしました」
マイクを握った司会者の声が場内に響き渡った。
「それでは始めましょう」
水を打ったかのような静寂
「夜の帳 の開催です」
ウオオオオォォォォオオオー!!
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