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Ⅸ君には渡さないpartⅡ ⑫

 ウオオオォォォオオオー  ウオォオォォォォオオオオー  蠢いた空気が、一気に大歓声となって押し寄せる。人の声と熱量で空気がうねっている。 「会長万歳!」 「会長万歳!」 「会長万歳!」 「会長万歳!」  讃歌が上がる。  会場がうねり、賛辞の声と拍手が熱気を加速させる。  異様な盛り上がりが巻き起こる場内の熱量にあてられた俺の心臓が、ドクドク、ドクドク、拍動を増していく。  司会者も、議員も、秘書も。  この会場にいる全員が、俺に注目している。 「諏訪会長、ばんざァァーい!!」  熱気が渦巻き、高くなればなるほど、鼓動が凍りついていく。  背筋に得体の知れぬ冷たいものが走った。 (会長……)  諏訪会長の事か。  政界を影で操る諏訪元総理大臣。姿はない。 (この勉強会の主催者は諏訪会長)  『夜の帳』というのも……  真川さんが言っていた。  諏訪会長には黒い噂が囁かれていると。 (『夜の帳』も諏訪会長が主催しているんだ)  この勉強会は『夜の帳』を開くための隠れ蓑だ。  真川さん!  姿を探すけれど、会場に真川さんはいない。警備員によって、外へ連れ出されてしまったのだろうか。  俺は、『夜の帳』のguestにされた。  どうしよう。  逃げられない。  どうしよう、真川さん。 「皆様、ご静粛に」  会場が水を打ったようか静寂に返った。 「憐れなΩに救済を」  マイクから司会の男の声が場内に響き渡る。 「僭越ながら、私が先陣を切らせて頂きます」 (この男に何をされるんだ、俺っ)  振り上げた司会の男の人差し指が、天井を指した。 「百万」

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