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Ⅸ君には渡さないpartⅡ ⑯
壇上の声が冷酷に言い放った。
「お取り下げを」
「承服しかねます。コールの金額に疑念をお持ちでしたら、この場で審査をすればいい」
凛とした声は譲らない。
「カードで一億、お支払いします」
すらりと伸びた指先がスーツの胸元から、ゴールドカードを取り出した。
だが黒服がカードを受け取ろうとする寸前で、壇上から手が制止する。
「そんな事を申し上げているのではありません。もっと根本的な理由ですよ。真川さん」
鋭利な視線をスッとすがめた。
「あなたには『夜の帳』に参加する資格はありません」
どんな手段を使ってでも、真川さんの落札を阻む気だ。
司会の男を睨むが、真川さんの声は落ち着いている。
「おかしいですね。受付は先刻済ませています。名簿を確認して頂ければ、すぐに分かる事ですが」
「受付は勉強会のものです。『夜の帳』は会員制の会合となっております」
司会者の指示で黒服が真川さんを取り囲む。
「お引き取りを。真川さん」
圧で退席を強いる。
「帰りませんよ」
真川さんのオーラが威圧する。
αの中でも更に能力の高い真川さんの攻撃的オーラに黒服達がひるんだ。
「私は、そこのΩを取り戻しに来たのです」
宵闇色の瞳が壇上の男を射貫く。
「彼は私の助手であり、婚約者でもあります。このような場所に、彼一人を残して去るわけにはいきません」
真川さん!
今すぐ真川さんに駆け寄りたい。
(調子がいいって怒られても)
(こんな時だけ頼りにして……って呆れられても)
諦めずに俺を助けようとしてくれて、ごめんなさい。
足を引っ張ってばかりのΩで、ごめんなさい。
ハァハァハァッ
しかし、発情の止まらない重い体は易々と駆けつけた警備員に取り押さえられた。
「触るな!彼は私のものだ」
「テレビでは常にクールな政治ジャーナリスト・真川尋でも、そんな顔をするんですね」
「しちゃ悪いか?」
真川さんのオーラが凄味を増した。
「悪くはありませんよ。明里優斗様は大切な『guest』です。丁重な取り扱いをいたしますので、真川さんにはご退席をお願い申し上げます」
「お断りします」
「分からない人ですね。あなたは、ここにいる資格はない」
「資格ならありますよ。私は優斗の婚約者として、彼を落札しました。彼を連れ帰ります」
「あなたにはできません」
壇上の声が酷薄に吊り上げる。
「所詮、あなたは婚約者です」
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