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Ⅸ君には渡さないpartⅡ ⑲

「立てるか」  真川さんの腕が、俺を引っ張り上げる。 「辛いだろうが、我慢してくれ」  司会の男が倒れ、指示系統が混乱している今しかない。 「行くぞ」 「はい」  この混乱に乗じて会場を脱出する。重い足を引き摺って歩を進める。  前に進まなきゃ。  ハァハァハァ  一歩、足を進めるだけで息が上がる。でも、発情で体が辛いのを言い訳にはできない。  真川さんが体を張って作ってくれた、脱出の隙。 (絶対、無駄にしたくない) 「優斗」  不意の声が鼓膜を震わせた。 「ここを出たら、ホテルに行くぞ」 (真川さん) 「発情期は病気ではないから、救急搬送できない。急患でない君は、病院に行っても診察待ちになる。そこまで君の理性が持つか」  声が耳朶に沿って耳打ちした。 「発情した体をおさめる方法は、君も分かっているだろう」  体が熱い。  真川さんに触れられている場所……  歩みを助けるために俺を支えてくれているあなた腕。たったそれだけで、あなたを意識してしまう。 「嫌か」  声が低くくすぐる。  答えられないのは、俺の体がいうことをきかないせいだ。 「君は本位でないだろうが、俺以外の雄が君を抱くのは嫌だ」  声が真摯に俺を包む。 「君を抱かせろ」  荒い呼吸の中で、あなたの名前を刻む。  真川さん……  刹那。  ブォォーブォォーブォォーッ  サイレンが鳴り響く。  グァシャアァァーンッ  けたたましい金属の響鳴が轟いた。 「逃がさねぇよ」  司会の男が這い上がる。壁伝いに手をついて拳を振り上げた。  右拳が壁のブザーを押した。 「おい、お前達は籠の中の鳥だ」

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