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Ⅹ君には渡さないpartⅢ ③
「明里君」
覚める声が静寂を破った。
「先生!」
モップを投げると同時。
黒服が勧修寺先生に掴みかかる。
「αがッ!調子に乗りやがってェェッ」
「……おい」
夜の闇が深淵に降りる。
空気が凍てついた。
「口を慎め。聞いてない事を喋るな、と言わなかったか」
冷冽な夜の瞳が支配する。
鼓動を押し潰されるような圧迫感。
(これがαの威圧)
「臭い口を閉じろ」
グォガンッ!
容赦なく、モップの頭が黒服の顔面に落ちた。
男の手が伸びて、空を掴む。
意識は既にない。
悲鳴を上げる間もなく、後頭部から男が倒れる。
「おやおや、そんな所に立ってたのですね。危ないですよ。今から掃除をしますので。モップ、当たっちゃいますよ」
にこりと微笑む狂気の瞳。
「貴様ァァーッ!」
「ふざけるなッ」
「βを馬鹿にしやがって」
ガゴン
モップの柄が目にも止まらぬ速さで、足払いをかける。避けきれず、男達が前のめりにすっ転んだ。
「βだから馬鹿にしてるんじゃない。低俗な人間だから馬鹿にしてるんだ」
凍る視線が彼らを見下ろす。
「αァァァーッ!」
隙をついて背後をとった黒服の腕が、勧修寺先生の首に伸びる。
巨漢の男だ。
捕まればひとたまりもない。
「喋るな。息が臭い」
振り向きもせず。振るったモップが男の横っ面を直撃した。
巨漢の男が壁まで吹っ飛ぶ。
「息をするな。塵芥 が……」
ある者は気を失い、ある者は倒された事にも気づかず床の上で失神し、またある者は戦意を喪失し、為す術もなく地ベタで頭を抱えて震えている。
「私は潔癖症なので、塵芥を見ると片付けられずにはいられません。君は……」
運が悪かったんだ……
床に座り込んで震えている、そのβは頭上から降ってきた声を見上げてしまった。
「塵芥ですか?」
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