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Ⅹ君には渡さないpartⅢ ⑨
先生、痛かったのかな?
思いっきり転んだよな……
思いっきり悲鳴が聞こえたもん。
ぐへ。って……
(先生のキャラで「ぐへ」はない)
でも「ぐへ」って言った。
相当痛かったんだろう。
せっかくクールで狡猾な政治家キャラ認識になったのに。
(さっきの「ぐへ」で全部、台無しだ)
仕方ないよ……
最後の最後で、ドジっ子が発動しちゃったんだ。ほんと、先生ってドジだなぁ。
(なんて声かけよう?)
取り敢えず、「ぐへ」には触れない方がいいよな……
「優斗、面白い顔になってるぞ」
「えっ」
「俺以外の心配で面白い顔をするな」
真川さんが嫉妬してる?
……ちょっと嬉しいかも。
……って★
そうじゃない。
「勧修寺先生が転んで『ぐへ』って!」
「先生ならピンピンしてるぞ?」
…………………………えっ!?
普通に立っている。
床の上、堂々と立っている。
転んだ形跡は特にない。
(……あれ?)
先生、身長伸びた?
でも先生は大人だ。衆議院議員なんだからな。思春期真っ盛りの中高生でもあるまいし、急激に身長が伸びるなんて。
ゴシゴシ
目をこする。
ゴシゴシ
目の錯覚じゃない!
思春期真っ盛りでもない先生の身長が確実に高くなっている。
「真川さん。勧修寺先生って何歳ですか?」
「39歳」
「うそっ」
10歳は若く見えるよ!
「真川さんより年上だったんですかっ」
「それ、どういう意味だ」
ひっ!
真川さんのαオーラが不機嫌になった★
「真川さんも若いですっ。若く見えます!」
「………」
何か喋ってください、真川さん!
「最初に会った時なんて、俺より年下じゃないかって!」
ごつん★
真川さんのげんこつが頭に下りた。
「俺はジャーナリストだからな。若く見えると政治家の古狸どもにナメられる。年齢相応でいいんだ」
「はい……」
ごめんなさい、真川さん。
ぐすん。
げんこつ、痛い……
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