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Ⅹ君には渡さないpartⅢ ⑫
勧修寺先生のカリスマだ。
司会の人の部下全員、膝を折り、深々と先生にかしずいた。
「よし」
先生が頷いた。
「部屋の解錠のリモコンを渡しなさい。従わない時は……」
むぎゅう~
「分かるな?」
イーグルアイが狂暴に見開いた。
左足が足の下の男を踏みつける。
瞳の中、薄く揺らめく光に悪魔が宿っている。
速やかに駆けつけた一人の黒服が足の下の上司の体を半分起こし、もう一人の黒服がスーツのポケットを探る。
ポケットから見つけた小型解錠リモコンにほっと息をつくと、恭しく先生に差し出した。
「よろしい」
受け取ったリモコンに神妙な面持ちで視線を落とす。
「ロック解除番号は?」
これで錠が開く。
扉を開ければ、空気が流れてフェロモン濃度が薄まる筈だ。後は隙を見て俺達は脱出すればいい。真川さんを見返すと、宵闇の双眸が頷いた。
「麻川さんからは何も聞いておりません」
黒服が首を振った。
「そうか。聞き出そうにも、ぐっすり眠っていますね」
気を失っている……というんです。
手の中にある盤上の数字とアルファベットに目を凝らす。
「まぁ、いい。低能の浅はかな思考など手に取るように分かりますよ」
迷いのない指が盤上のキーを滑るように押していく。
ピッピッピッ
プシュー!!
(なんだッ!?何が起こったんだっ!?)
解錠リモコンが白い煙を噴き上げている。
(まさか……ロック解除番号を間違えた……とかじゃないですよね)
先生??
ガラガラガシャンッ
突如、先生が力いっぱい解錠リモコンを床に投げ捨てた。
火花を上げてリモコンが黒煙を噴くと、小さな電子音を奏でて画面が真っ黒に制止した。
バチバチバチッ、バチッ……ピーピピ
「このリモコン、最初から壊れていましたよ」
「「ちがう!!」!!」
同時に叫んだ俺と真川さんの罪を誰が問えるだろうか。
あなたが壊したんだアァァー!!
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