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Ⅹ《おまけ+》【前編】小文字オー、大文字アイ、小文字オー
ここから脱出する唯一の頼みの綱のリモコンが壊れた……
言うまでもなく、一人のドジっ子αの暴走のせいだ。
「黒服さん……予備のリモコン、ありますか」
「麻川さんからは何も聞いておりません」
男が申し訳なさそうに頭を下げた。
閉じ込められてしまった。
俺達はこの部屋から出られない。
いや、不慮の事態に備えてきっと何らかの緊急脱出手段はあるのだろうが、この会場を封鎖した張本人は勧修寺先生に踏まれ続けたせいで気絶している。
こうしている間にも、Ωフェロモンの濃度が上昇している。
会場内、正気を保っているのは真川さんと勧修寺先生。βの黒服達だけだ。
αはβよりもΩの発情フェロモンの影響を受けやすい。能力の高さに反比例するらしく、能力の低いαほど本能に飲まれるのだと勧修寺先生が言っていた。
あと、どれだけもつだろう。
十分、いや五分……もしかすると五分もないかも知れない。
ハァハァ、ハァハァ
あちらこちらから、荒い息が聞こえる。いつ本能に飲まれた発情α達が、俺に襲いかかってきてもおかしくない。
(あのリモコン)
勧修寺先生が投げつけたリモコンが復活すれば、脱出の糸口が開ける。
まだ使えないだろうか?
「先生、念のために聞きます。解錠暗号は何を入れたんですか」
「小文字オー、大文字アイ、小文字オー」
オー、アイ、オー
『oIo』
「なぜ『oIo』だと思ったんですか?」
「『ちんこ』です」
………………
………………
………………
は?
「先生……今、なんて仰いましたか」
「『ちんこ』だ」
「………」
「だから『ちんこ』」
俺の聞き間違いであってください。
「『ちんこ』」
「………」
聞き間違いじゃなかった(泣)
「君は何回、私に『ちんこ』と言わせるんだ」
先生が勝手に言ってるだけです。
「聞こえたら復唱しなさい」
「………」
「復唱は業務伝達の基本だ」
「………」
「『ちんこ』……はい」
「ち…………………………んこ」
こんな卑猥な言葉言いたくない。一体、なんの業務だァッ!
「聞こえない。『ち』と『んこ』の間は、間をあけない。短く発音だ」
しっかり聞こえているよね!先生!
「はい、もう一度。『ちんこ』」
「………」
「『ちんこ』!」
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