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Ⅹ《おまけ+》【中編】oho
もしも……
真川さんとお付き合いしたら、きっと真川さんは素敵な恋人になってくれるんだろうな。
いつもからかわれて、時々喧嘩して、でも最後は仲直りして。会えない日はもどかしくて、会ったらまたからかわれて喧嘩するのに、だけど会うのが待ち遠しくて。そんな幸せな時間を、きっと二人で過ごすんだ。きっと。
会う日も会わない日も、毎日ドキドキして。
こんな人が恋人だったら、俺の心臓がもたないよ。
でも俺達の今の関係は助手兼婚約者という事になってるから、結婚を前提にお付き合いしてるんだ。
真川さんが旦那様になったら、幸せな家庭を築くんだろうな。
(俺はΩだから)
高嶺の花
分かってるから。
胸がちょっぴり痛い。
真川さんはいつまで恋人の振りをしてくれるんだろう。
この時間はいつまでも続かない。
(大切にしないと)
……いけない。
「あの、もう大丈夫です」
俺……
「ひとりで立てます」
俺から離れる。
あなたから離れづらくならないように。自分で、ひとりで。心を離さなきゃ。
「えっ……わ!」
強引な引力に突然引っ張られた。
(なんで?)
あなたは、俺を……
「離してくれないんですか」
「当然だろう」
答えになってない。
あなたの手が、俺の手を結んでいる。
「恋人同士が手を繋ぐのに理由は要らないよ」
俺はあなたの恋人で。
あなたは俺の恋人。
今だけ
今、この時間だけ……
(ずっと、この時間が続けばいいのに)
ずっと続いたら嘘の恋人だって本物になれる。
でも俺達は嘘の恋人だから、いつか終わる。
終わらなきゃいけない、恋人ごっこだから……
それでも、あなたの手を振りきれない。
きゅっと握り返した俺は、今だけ偽りの恋人だから。
(許して)
「君は発情期なんだから、もっと甘えてほしい」
甘い囁きが胸をくすぐった。
甘え方が分からなくて。
でも、あなたに精一杯甘えているのに。
どうして気づいて気づいてくれないんだろう。
大切な気持ちに限って伝わらない。
心臓ばかりドキドキ、ドキドキうるさくて。
あなたの顔すら、まともに見られない意気地なしだ。
「あっ」
長い指が顎を持ち上げた。
「俺に見せられない顔、見てみたくなった」
宵闇の瞳が柔らかに揺れる。
「想像以上に面白い顔だな」
「それって褒め言葉ですか?」
「最上級で君を褒めている」
ププッと笑いがついて出た。
このシチュエーションで不謹慎たけど、俺が俺らしくていいのかも?
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