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Ⅹ《おまけ+》【前編】oho!
触れる。
降りてくる唇。
(触れられる)
唇が、唇に。
瞼を閉じる事もできなかった。イーグルアイが滑空する。獲物をさらう研ぎ澄まされた双眼から逃れられない。
(勧修寺先生にキス……)
「しませんよ」
低く耳元を穿った声。
「抵抗しない獲物に興味はないんです」
唇が髪に口づけた。
「私に奪われたかったら、抗ってみせてください」
抵抗を……
「ひねり潰すのが私の趣味です」
鷹の眼が柔らかに微笑んだ。
「君の面白い顔が見られたので、今回は及第点をあげましょう」
「そんなものは返却だ」
「わっ」
強い力に抱きすくめられた。
「俺の優斗に勝手にものを与えるな」
(『俺の優斗』……って言われた)
心臓がまたドキンッ……って響いた。
「『俺の……』ねぇ?」
鷹の目をすうっと細める。
(あれ?その後、真川さん)
『勝手にものを与えるな』……って。
(ペット扱いしてないか?)
複雑だ〜〜
「もう一つ、面白い顔が見られました」
口許に手を当てて、クスクス笑った。
「レアですね。怒るなんて」
離した口許の手を、すっと静かに俺に伸ばした。
「ありがとう。真川さん」
指先にかみのを絡めとる手が、俺の頭を撫でている~
これじゃあ、ほんとにペット扱いだ。
「先生。人の話を聞いて下さい。優斗に勝手に触らないでください」
「君の意見、聞く義務があるのかな」
「有権者の声です」
「君の一票は要りません」
「では、御礼の言葉も返却いたします」
「大人の言葉は素直に受け取るものですよ」
この二人……
(俺を挟んで火花が見える★)
なぜ?
どうして?
こんな事になった?
(うぅ。肩身が狭い)
αの威圧オーラが半端ない。
喧嘩ならよそでやってください。
「ペットはしっかり躾てくださいね」
(う)
やっぱり勧修寺先生は俺をペットだと思ってる。
「優斗はいい子だ」
(真川さん~)
それ、フォローになってません。
(29のアラサーが、いい子って……)
なんだろう。この胸に広がる哀愁は……
「私達に挟まれて、顔が真っ赤になっている。発情が進んでいるようだ」
「大丈夫か、優斗?」
あなたが「いい子」だなんて言うから、恥ずかしくて。
(こんなになった張本人は、あなただ!)
けれど親身になって俺を心配してくれる真川さんに、本当のことは言えない。
「この分だと近いのではないか」
おもむろに勧修寺先生が取り出したのは……
(いつの間に?)
この部屋を解錠するリモコンキーが、先生の手に渡っている。
ピッピッピッ
「あっ」
また勝手にリモコンのキーボードを弾いた。
「優斗君は、これだろう」
oYo
ディスプレイに浮かんだ文字は『oYo』
………………なんの暗号だろう。
ドキンッ
なんだ?突如、不規則に鼓動が鳴った。嫌な心音だ。
よく考えろ。
二人のα達は様々な暗号を駆使してきた。どれにも通じる共通の文字はなんだ。
(『o』)
アルファベットを挟む二つの『o』は、雄が雄たる子孫繁栄を尊ぶ創造主の袋だ。
(では間の『Y』は?)
なにかが二本飛び出している。
(触角?)
そんなものは生えていない。
(雄自身が二本)
俺は一本だ。
(何だ?)
一体なにが出ているのだ?
プシュ
リモコンがまた白い煙を吐き出した。
「優斗の……」
ぎゅっと逞しい腕が俺を包む。
「早漏は個性だ」
ハアアァァァァアアアーッ♠️♠️♠️
(『Y』って、まさか~)
「早漏は恥ずかしくない!」
「恥ずかしいィィー!!!」
つか、俺。
「ちがうからァァァァ~~★!!!」
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