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Ⅹ君には渡さないpartⅢ ⑮
「俺は……」
噛み締めた拳をぎゅっと固めた。
「守られるのは嫌です」
我儘だ……
俺は……
「俺も……」
フィアンセだっていうなら。
「あなたを守りたいです」
将来を誓い合った恋人だっていうなら。
(対等でいたい)
嘘のフィアンセでも。
今だけは本物になりたい。
「俺は非力です。あなたを守るために何をすればいいのかも分からず喋っています。でも、だけど、あなたを守りたいんです」
無茶苦茶だ。俺の言ってる事は……
でも。
(言葉に嘘はありません)
「俺にできることはありませんか」
「君は……」
(あきれられたかな)
守りたいのに。守る方法を守りたいあなたに聞くなんて、つじつまが合わないもん。
フッと、真川さんの唇から吐息が漏れた。
がっ
「ワワっ!痛いです、真川さん」
頭をわしづかまれてる★
「面白い顔」
「またそうやって俺をからかう」
真剣に話してるのに。
「俺を信じていればいい。それが君にできる事だ」
(真川さん……)
グシャグシャ髪をかき混ぜる手は乱暴だけど優しい。
「君の力を貸してほしい」
その腕が俺を引き寄せた。
強く。熱く。苦しく。有無を言わさず。
鼓動が聞こえる。
鼓動が耳を穿つ。
鼓動の音が押し寄せる。心臓まで。
ドキンドキン
拍動する。
あなたの鼓動が、俺の鼓動をノックして煽るんだ。
有無を言わさず。
あなたの熱い鼓動に、俺の鼓動がドキドキ胸を打ち付ける。
「俺は……」
こんな体勢じゃ、あなたを守れない。
あなたの腕にすっぽりくるまれていて抱きしめられていては。
「もう忘れたのか。君にできる事は、俺を信じる事だ」
「だけど」
「俺も君を信じている」
「……はい」
真川さんの胸に額をくっつける。
「俺もです」
信じています。
真川さん。
地響きが均衡を揺るがした。
α達が動いた。
迫ってくる。標的は俺だ。Ωフェロモンに犯されたαに最早理性はない。
俺と一緒にいては真川さんも危険だ。
けれど……
真川さんが一緒にいるから、あなたを守れる。
(大切なものは手離しちゃいけないんだ)
あなたの手をきゅっと握った。
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