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Ⅹ君には渡さないpartⅢ ⑰
さな……
さなぁ……
さなが……さっ
「喋ろうとするな。舌、噛んでしまうぞ」
吐息の熱が耳朶をくすぐる。
(からかわないで)
「さながぁ……ァフゥ」
「こら。ほんとうに噛むぞ」
舌が蹂躙する。
(真川さんの舌が口の中……)
入ってくる。
(なんで?)
苦しい。
なんでこんなことするの?
息できない。
(さんそ……たりない)
頭の中がぼーっとして、ピチャピチャ、ピチュピチュ、水音だけが鼓膜の奥に鮮明に響く。
(どうして真川さん、こんな苦しいことするの)
わずかに唇が離れて、また寄せて、触れて吸われる。何度も何度も角度を変えて。
「……さながっぁさん、まじめにぃ……フアァ」
「まだそんな口がきけるのか。余裕だな?」
余裕なんか全然ない。
(頭の芯が痺れて)
熱くて、思考ができない……
意識が白い繭にくるまれていくみたいに、ぼんやりする。
(こんなことしてちゃ)
だめ……
本能に飲まれたα達をなんとかしなくちゃならないのに……
「すき……」
俺、なに言ってるの?
「俺もだ」
あなたの囁きが心臓の奥に落ちてきた。
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