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Ⅹ君には渡さないpartⅢ ⑲
「すまない」
声はどこか遠くに聞こえた。
α達が全員、倒れている。
意識を失いかけていた、あの一瞬で。
(ここにいるα全員を)
なんで?
「君の意志を無視した」
なぜ?
「どうして……」
「君にはすまないと思っている」
「そうじゃありません!」
俺が怒っているのは。
「どうして謝るんですか」
「君ッ」
掴み掛かろうとして、まだ体力の戻っていない俺は逆に真川さんに支えられてしまう。
情けない。でも言わなくちゃ。
「真川さんに謝られたら、俺の気持ち、あなたに信じてもらえなかったみたいで……」
俺はあなたを信じていたから。
「真川さんを悪いと思ってません。責めてもいません」
ただ……
「謝られると悲しいです」
むきになって、子どもみたいだ。
笑われるかな?
(けれど、それでも)
あなたに向き合ってほしい。
俺を見てほしいと思うのは、欲だろうか……
大きな手が降りてきて、髪を撫でる。
やっぱり、あなたは俺を子供扱いする。
だけど……
「ありがとう」
あなたは俺に、ほしい言葉をくれるんだ。
「これだけで十分だったな」
「はい!」
口許が綻んでしまう。こんなんじゃ、子供扱いされても仕方ないかも。でも、あなただからこんな顔になってしまう。
「余計な事を考えてしまうのは、俺の悪い癖だ。すまない」
「もう。また謝った」
「本当だ。すまないな」
ぽんぽん。
大きな手が頭に降りてきた。
「俺は真川さんの役に立てましたか」
「あぁ、ありがとう」
柔らかな微笑みに、ドキンッ。鼓動が響いた。
真川さん、こんな笑顔するんだ……
「失礼な。人を鬼みたいに」
「えっ」
もしかして心の声、だだ漏れしてた?
「真川さんっ」
「君は謝らなければな」
「ごめんなさいっ」
90度のお辞儀
ゴンッ
……しようとして胸にぶつかった。
「……君は、もう少し周りを見なさい……」
真川さん、痛そう~
思いっきり頭突きしてしまった……
なでなで
(う~)
額を真川さんに撫でられている。
きっと赤くなっている。
頭、ズキズキするような、しないような~
恥ずかしすぎて痛みも分からない。
「あのっ、病院……」
「そんなに痛むか」
「俺じゃなくって」
話題を変えようとして、とっさに『病院』という言葉が口をついて出た。
俺は平気だけど。周りに二十人を超えるα達が倒れている。誰一人として、ピクリとも動かない。
異常事態だ。
「救急車を呼んだ方が」
「それには及ばない」
いま、真川さん、笑った?
「そっとしておく方が、彼らにとって寧ろ親切というものだ」
人が大勢倒れているのに、どういうことー??
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