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ⅩⅠ《おまけ+》換気しよう!【後編】
二人とも譲らない。
頑として譲らない。
真川さんを見やった。
うん、と一つ。真川さんが頷いた。
勧修寺先生を見やった。
うん、と一つ。勧修寺先生も頷いた。
(二人のαから威圧のオーラが出ている)
違う。そうじゃない。
αのプライドよりも……
(今は空気清浄機)
早く付けないと、今度こそ俺、本当に倒れそう。
「真川さん」
口火を切ったのは勧修寺先生だ。鋭い視線が一瞥する。
「オナニーしたいんじゃありませんか?」
…………………………は??
「我慢なさらずに、どうぞ。私は一向に構いませんよ」
「………」
真川さん、どうして言い返さないんだ。
こういう時こそあの返しだ。
(『お戯れを』)
以前、真川さんが使ってた。今こそ『お戯れを』の出番だ。
「………」
(真川さんが言い返してくれない!)
まさか真川さんまで?
(Ωフェロモンの影響が)
αはΩフェロモンの影響を受けやすい。
βも全く受けないという事ではないのだが、第2性の中でもαは特にΩのフェロモンに敏感だ。
黒服のβ達はフェロモンの影響を受けない安全圏まで下がっている。
(俺の隣は、真川さんと勧修寺先生)
能力の高いαほどΩフェロモンの影響は受けにくいというけれど……
(もしかして勧修寺先生は!)
Ωフェロモン耐性を使って、真川さんとの優位性を測っている。
勧修寺先生は今のところ、Ωフェロモンの影響は出ていない。
真川さんがフェロモンの影響で発情を我慢しているのだとしたら……
耐性は能力の高さに比例する。
フェロモンの影響を受けないαは能力が高い。
(勧修寺先生が、真川さんよりも上)
揺るぎない格付けの構図が出来上がってしまう。
真川さんの手をぎゅっと握ろうとして躊躇した。
(俺とキスしたから……)
真川さん、フェロモンを大量に吸い込んでしまったんじゃ。
だったら、俺のせいだ……
真川さんの能力が勧修寺先生よりも低いわけじゃない。
急激にフェロモンを大量摂取してしまったから、真川さんは……
不意にぎゅっと、冷えかけた手に温もりが宿った。
握ろうとして諦めた手を、握ってくれている。
「真川さん……」
「何を考えている?俺の好きな面白い顔が、ひどい顔になってるぞ」
「こんな時に……言わないでください」
真剣に心配して、心底反省してるんだ。
「俺だって、こんな事になってしまって悪いと……」
「君が自分を責める必要はない」
「でも。俺のフェロモンを吸い込んだから、真川さんが発情して」
「困ったな」
俺、真川さんを困らせている。
「すみません」
「謝られても困る」
「そうですよね」
謝ったから発情がおさまる筈もない。
「俺の股間、見てくれないか」
「真川さんっ」
なにを突然言い出すんだ、この人は★
「早く」
「でも」
「いいから」
真川さんは発情している。俺のフェロモンのせいだから、これくらいはしてあげるべきか。
(股間を眺めてあげるだけ)
服の上からだから、卑猥じゃない。
自分に言い聞かせて、そっと視線を下ろした。
………………じーっ
「勃起していない」
「…………はぁ」
スラックスは確かに真川さんの言う通り、膨らんでないけれど。
「分かったか?」
膨らんでいない股間を眺めて、一体なにを理解しろというんだーッ★
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