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ⅩⅠ意地悪な鼓動が鳴り止まない⑥
「なに、言ってるんですか」
床の上から、ようやく声を搾り出した。
「一億で君を買うと言ったんですよ」
(俺が一億で勧修寺先生に買われる)
どうして?
「君はオークションの品だ」
この会場は勉強会という名前で取り繕われた、Ωオークションの闇市場。
だけど主催者不在で、司会者も倒れた今、オークションを続行する意味なんて……
「出品されているのだから、誰かが買わねばならないでしょう」
「けれど」
「君はΩだ。拒否権はない」
腕を高く吊るされて持ち上げられる。
「真川さんの言い値の額で、私が君を買います」
どうして、あなたは俺に……
違う。
真川さんに……
「その目は何ですか。文句でも?」
睨み付ける真川さんに冷たい玲瓏が構えた。
「君にオークション参加権はありません」
「それで指をくわえて見ていろ、と」
「そうです」
「真川さんッ」
掴み掛かった真川さんに息を飲む。
「ならば、あなたがオークション参加を放棄してください。優斗は俺が連れ帰る」
「君の指示を聞く道理がない」
「指示ではありません。警告です」
「ほぅ……従わなければ、私はどうなるのでしょう」
夜をまとう瞳が三日月のように爪を立てる。
「君に私は出し抜けません」
「私はジャーナリストだ。Ωオークションを公の場で発表します」
真川さん……
けれど、それでは……
「この会合は、勉強会という名でオフレコです。暗黙の約定を違えれば今後、政界全体が君を信用しない。情報提供もしないし、取材も受けない」
事実上、君は……
真川尋
「ジャーナリスト生命を絶たれます」
「構いませんよ、それでも……」
彼の目は、後戻りしなかった。
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