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ⅩⅠ意地悪な鼓動が鳴り止まない20

 雄の人、俺の手をとってチュってしてくれた。  少し眼差しが穏やかになったみたい。  良かった。  雄の人も俺の髪を撫でてくれる。もっと触ってほしいな。 「んっ」  ちょっと唇を尖らせておねだりしたけれど、キスは落としてくれない。残念。 「こら」  つんつん 「私の見てる前で浮気ですか」  仮面の雄の人に鼻先、摘まれた。 「……それとも、煽ってるんですか」 「そんなんじゃ……んっ」  仮面の雄の人に唇を向けた。  キス、して…… 「君のお誘いに乗らない雄なんていないでしょう」  きれいな瞳。  蜂蜜色の甘くて、優しくて……  甘美な香りを漂わせる瞳が近づいてくる。  このまま、落ちて、唇に触れる…… 「どんなふうにキスされるのが、お好みですか」  耳たぶをチュっと唇が吸った。 「おやおや、ここはお気に召しては頂けなかったようですね」  ぷにぷに 「ほっぺた膨らまして」 「だって」  キスは唇が良かったのに。 「いくらでもしてあげますよ。後で」 「後でじゃなくって」 「今だろ」 「はぅっ」  獰猛な唇が唇を奪う。  噛みつくように荒々しく、舌はつついたかと思うと優しく絡めとられて、逃さないというかのように強く吸われる。囚われる。 (もう一人の雄の人)  荒々しいのに優しくて。  でも、どうして? 「君は最初から俺のものだ」

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