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ⅩⅡ思い出せないけれど、好き①
(好き)
好き、好き……
大好き。
思いが溢れてくる。
口の中を蹂躪する舌に翻弄される。
ついていくので精一杯だ。
差し込まれる舌を追いかけると、チュウっと音を立てて、俺を待って絡め取ってくれる。
唾液が飲み込めない。
息もできない。
口づけの本質に潜む熱に翻弄される。
「さなが……さん……」
俺、なにを言おうとしたの?
(俺は、この雄の人を知っている?)
優しく後頭部を押さえつけられて、もっと口を開くように促された。
なにか思い出せそうだったのに。
もうなにも考えられなくなる。
白く……白く……真っ白に意識が染まっていく。
菫色 の宵闇の目に見つめられているのを感じるだけで、ドキドキする。
はしたなくも股間が膨れ上がる。
「ひんっ」
触られた。
菫の雄の人に。
(どうしよう)
どうして、俺……焦るの?
Ωならもっと見せつけて、興奮しているアソコで雄を誘って、精子をもらわなきゃいけないのに。
この雄の人に見られると、恥ずかしい。
(俺、変だ……)
「はしたなくなっても大丈夫だ。Ωの本質も、君だと思っている。大切にするよ」
(どうして?)
一筋、涙が零れた。
快感にうなされて。
だけど、快感だけじゃない。
この涙の正体は?
「気持ちいい?」
「はい」
「良かった。俺も嬉しいよ」
雄の人のアレが当たる。おっきい。
「私も構ってくださいね」
「ひゃあぅ」
胸元に忍び込んだ指が、ちゅんっと小さな胸の身を引っ掻いた。
「私を忘れてたでしょう。ダメですよ」
ちゅんっとまた、爪が引っ掻く。それだけで体がビクンッと跳ね上がる。
「君を愛しているのは、彼だけじゃない」
熱い息が耳朶を這った。
「私が欲しいと言いなさい」
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