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ⅩⅡ思い出せないけれど、好き17

 なんで、教えてくれないんだろう。 (雄さんの名前、呼びたいのに)  二人は俺になんか呼ばれたくないのかな…… 「そんな顔するな」  大きな掌が頭を撫でてくれたけれど、ちっとも嬉しくない。横に頭を振って、手を払いのけてしまう。 「ご機嫌ななめになってしまいましたね」  子どもっぽく拗ねたみたいな言われ方で、分かってくれてなくて胸がぎゅって苦しい。 「ごめんな、優斗」  また大きな掌が降ってきた。 「俺も……いや、俺達も君に名前を呼んでほしい」 「……じゃあ、なんで?」 「だって……」  小さな沈黙の後、二人の雄さんが互いの顔を見合わせた。 「そうだな……」  言えないこと?  俺には教えられないことなの?  見つめる視線をさ迷わせてしまう。  ほんとうに、教えたくないのなら、これ以上聞いちゃいけない。 (でも、それはとても寂しい)  せっかく雄さんと仲良くなれると思ったのに。  もっともっと仲良くしたいのに……  名前を呼んで、名前を呼んだ唇でいっぱいキスができると……思ったのに。  長い静寂の後、根負けしたように、二人の雄さんがフゥっと息を吐いた。 「君を悲しませるつもりじゃないんです」 「だから、顔を上げて。そんな泣きそうになるな」 「でも……」  俺とあまり仲良くしたくないから、雄さんは名前を教えてくれないんじゃないの? 「違うよ」  声はふわりと降り注ぐ。 「君に名前を呼ばれたら」 「歯止めがきかなくなる」  俺達はαだから…… 「Ωが欲しくてたまらない」 「君をひどく求めてしまう。優しくしたいのに、優しくなんかできない」 「俺はっ」  いっぱい、いっぱい。 「求めてほしいです」  雄さん、大好きだから。  ひどくされてもいい。 「君は……」 「君の初めての発情期なのに」  カプリ  二人の雄さんが、俺の耳たぶを食んだ。 「どこでそんな煽り方、覚えたんだ?」

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