207 / 217
ⅩⅡ思い出せないけれど、好き18
「煽ってなんかないです」
「君は嘘つきだ」
「嘘つきの唇は……」
チュ
「塞いでしまいましょう」
「そうだな」
唇が交互に降りてくる。
菫の雄さんと仮面の雄さん。菫の雄さんが離れると、仮面の雄さんが降りてきて、仮面の雄さんの後はまた、菫の雄さんがやって来る。
「はふはふ」
口づけがだんだん深くなる。
息が上手くできない。
「汗びっしょりだ」
「興奮してるんですね。このままだと気持ち悪いでしょう。脱ぎましょうか」
ほとんどボタンの外されていたシャツ。
「はい、ばんざーい」
腕を上げて、脱がしてもらった。
「よくできました」
「偉いぞ」
「はんっ」
唇が胸の二つの実、同時に食べた!
「もう一つご褒美だ」
「上手く脱げた君へ、私達も脱いであげましょう」
「ただし、上だけな」
ネクタイを緩め、紐解き、ベッドの縁に投げ捨てる。
シャツのボタンを上から順番に外していく。
「外してみるか?見てるだけじゃ、つまらないだろう」
不意に菫の瞳が鼻先まで近づいた。
「ほら。このボタン外して……」
導かれるまま、シャツのボタンに手を掛ける。
「あっ」
首筋に触れた瞬間、少し汗ばんでいるのが分かった。
「俺も興奮しているからな。君が欲しくてたまらない」
触れた指を捕らえられて、鎖骨に落とされる。
「暑いから、脱がせて」
掠れた吐息が、鼓膜をくすぐった。
拙い指がボタンを外す。
緊張して時間ばかりが過ぎてしまう。
「脱がすだけなのに焦らすんだな」
「そんなつもり……ない」
そう言うので精一杯。ボタンを外すだけなのに、集中しないと指と指の間からボタンが零れそうになる。
「最後の一つ。がんばれ」
髪を掻き分けられて、低くて透明な声を囁かれる。
最後の一個。
ボタンが外れた。
「ありがとう。上手くできたな」
肩からシャツが滑り落ちる。
均整の取れた体……
きれい……
ともだちにシェアしよう!