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ⅩⅢ思い出せないけれど、好きpartⅡ③

 ずっと、ずっと……  ずっと、ずっと、ずっと、ずっと一緒にいられたらいいのに。 (どうして、そんなこと思ったの?)  気づいたら二人の雄さんの手を握っていた。  するりと指と指の間から髪がほどけて、仮面の雄さんの手を握ってる。  俺の頬、撫でてくれていた手に手を重ねて、菫の雄さんの手を握ってる。  二人の雄さんと手を繋いで、ずっと、ずっとこうしていたい。……そう願っていた。 (俺は二人を知っている)  菫の雄さんも。  仮面の雄さんも。  とこかで出会ってる。  二人と出会って、二人は俺の事を大切にしてくれた。 (今も大切にしてくれてる)  思い出せないけれど。  思い出せない菫の雄さん。  思い出せない仮面の雄さん。  二人が大好き。  大切な人なんだ……  きっと。  ずっとずっと、これからも大切にしたいよ。  でも、どちらかを選んだら。  どちらかを大切にはできない。  両方を大切にしたいのは我儘で、許されないことだっていうのは分かってる……けれど。 (俺は……)  どうして、こんなにも胸が痛いのだろう?  二人の雄さんは、俺を大切にしてくれてるのに。 (俺は……)  雄さん達を。 (俺も)  雄さん達、大切にしたいのに…… 「優斗」 「明里君?」  二人の瞳が心配そうに俺を見つめている。 「辛い事したのか」  ちがう。そうじゃない。  首をいっぱい横に振るけど。 「じゃあ、どうして泣いているんですか」 「あっ」  知らずと零れた雫に、はっとして我に返った。 「これは……ちがうんです」 「ごめんな」 「明里君、すみません」 「そうじゃなくって」  ぎゅっと、二人の雄さんの手を握った。 「ずっとずっと、ずっとずっと、そばにいてください」

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