213 / 217

ⅩⅢ思い出せないけれど、好きpartⅡ④

 あたたかい……  温もりが心の穴を埋めてくれる。 「ほら。ここにいるだろう」 「どこにも行きませんよ」  唇の熱が涙を吸った。  舌先が肌に糸を引いた涙の痕をなぞる。 「ずっと一緒にいたいのは同じだよ」 「もっと甘えていいんですよ」  ほっぺたを音を立てて、両側から口づけされた。  チュっ。 「うん」  ありがとう、って。  そう伝えたいのに、胸が苦しくて声が出ない。  胸にいっぱい優しさが詰まってる。  キスといっしょに、たくさん注がれた優しさ。大切にしたいな。 「やっと笑ってくれましたね」  ……プニプニ。 「面白い顔」 「ひどい」  菫の雄さん。  ほっぺた、プニプニ突っついてくる。  俺のほっぺた、オモチャじゃない。  …………………………あれ? (以前にもこんなこと、あったような?)  気のせい?  夢?  なんだか、とっても懐かしい。  胸がキュウっと熱くなる。 (ねぇ……)  菫の雄さんは今、どんな気持ちでほっぺた突っついてる? 「表情、柔らかくなりましたね。少し嫉妬してしまいますが、でも良かったです」 「ありがとう。仮面の雄さんも。あのっ」 「おや、どうしましたか?」 「俺達、以前にも会ってますよね」 「えっ」  仮面の下の瞳が見開いた……そんな気がした。 「ごめんなさい」  聞いちゃいけないことだったんだ…… 「いえ。君に、そんなふうに思ってもらえて嬉しいな……と感じたんですよ」 「ほんとうですか」 「君の中に私がずっと住んでいるみたいで嬉しいです。君になら……」  唇がふぅっと吐息を吹きかけた。 「仮面の下の素顔を見せてもいいかも知れません」  熱い吐息が鼓膜を震わせる。 「いつか、君になら……」

ともだちにシェアしよう!