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ⅩⅢ思い出せないけれど、好きpartⅡ④
あたたかい……
温もりが心の穴を埋めてくれる。
「ほら。ここにいるだろう」
「どこにも行きませんよ」
唇の熱が涙を吸った。
舌先が肌に糸を引いた涙の痕をなぞる。
「ずっと一緒にいたいのは同じだよ」
「もっと甘えていいんですよ」
ほっぺたを音を立てて、両側から口づけされた。
チュっ。
「うん」
ありがとう、って。
そう伝えたいのに、胸が苦しくて声が出ない。
胸にいっぱい優しさが詰まってる。
キスといっしょに、たくさん注がれた優しさ。大切にしたいな。
「やっと笑ってくれましたね」
……プニプニ。
「面白い顔」
「ひどい」
菫の雄さん。
ほっぺた、プニプニ突っついてくる。
俺のほっぺた、オモチャじゃない。
…………………………あれ?
(以前にもこんなこと、あったような?)
気のせい?
夢?
なんだか、とっても懐かしい。
胸がキュウっと熱くなる。
(ねぇ……)
菫の雄さんは今、どんな気持ちでほっぺた突っついてる?
「表情、柔らかくなりましたね。少し嫉妬してしまいますが、でも良かったです」
「ありがとう。仮面の雄さんも。あのっ」
「おや、どうしましたか?」
「俺達、以前にも会ってますよね」
「えっ」
仮面の下の瞳が見開いた……そんな気がした。
「ごめんなさい」
聞いちゃいけないことだったんだ……
「いえ。君に、そんなふうに思ってもらえて嬉しいな……と感じたんですよ」
「ほんとうですか」
「君の中に私がずっと住んでいるみたいで嬉しいです。君になら……」
唇がふぅっと吐息を吹きかけた。
「仮面の下の素顔を見せてもいいかも知れません」
熱い吐息が鼓膜を震わせる。
「いつか、君になら……」
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