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第13話

 ――うわああああああ。  怪物みたいな声がする。喚き声がする。うるさい声が響いてる。  俺の喉から出ている。  俺が、殺した。  譲を、刺した。何度も刺した。  血だまりができてた。  二年ぶりの譲は倒れていて血塗れで血の気が失せていた。  佑月が「死んでしまう」と言っていた。  救急車がきた。  譲が連れていかれた。  俺が、殺した。 「さした、ゆずる、さした、おれ、アイツ、ころした」  譲には汚い俺を見せたくなかった。  触手の夢なんて知られたくなかった。  再会なんて、したくなかった。  父親がいなくなって普通になったはずなのに、普通じゃない俺を知られたくなかった。 「ころした、さした。ゆずる、血が、たくさん、出て、死んで」  ――うわあああああああ。  喉から、血が出てる気がする。出ていればいいのに。俺が死ねばいいのに。 「奏人! 奏人ッ」  暴れる俺をしっかりと抱きとめる腕。  ああ、あのとき、俺が刺した譲は――泣いていた。  いまの俺みたいに。  譲、譲。 「俺が殺した」  俺が――。 「――奏人」  きつく、抱きしめられた。耳元で苦し気な息が吐き出された。 「殺してない、死んでない。生きてる」  うそだ。 「俺は――生きてるよ」  頬に手が触れて顔を上げさせられた。涙でかすむ視界の中で、そう言われた。  誰が、生きてる? 「俺は、生きてる。奏人に、殺されなんて、してない。ほら、な?」  手を掴まれて、頬に触れさせられた。  指先に体温が伝わってくる。  苦しそうに、泣きそうに顔を歪めている――譲が、いた。  小学校と中学校一緒で、ずっと親友だった。 「……譲?」  久しぶりに、その名前を呼んだ。  譲は嬉しそうに微笑んだ。 「譲……、本当に……生きてるのか?」 「ああ、生きてる。鍛えてたからな。俺は死なないんだよ」 「……そうなのか」  大丈夫だ、と譲が俺の頭を優しく撫でてくれた。  勝手に流れていた涙。さらに目の奥が熱くなって、ぼろぼろと泣いた。  譲、譲、譲。  ごめん、って譲の胸に顔を埋めて泣いた。  ぎゅっと、ずっと抱きしめてくれる譲の鼓動と体温に、本当に生きているんだ、って。ずっと、泣いた。 ***

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