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第3話

朱雀様と初めてご対面したのは当時拾われた5歳の頃。3歳の朱雀様はもの凄く人見知りが激しく初めて来た使用人を見た途端に泣きわめいてそれはもう大変だったと奥様から聞いていました。なので少し警戒して会わなくてはと、父さんとお父様に連れられて屋敷のリビングに向かった。 「隆文さんに翡翠さん忙しいのにごめんね、えっとその子が朔弥君だね」 お父様が奥様にご挨拶できますね?と後ろに隠れていた私をひょいと抱えて奥様の前に出した。 奥様の腕には朱雀様がスヤスヤ眠っていて起こさない様にあいさつをした。 きちんとおじぎも忘れずに。 「朱雀様と仲良くして下されば良いのですが」 「大丈夫に決まってるだろ翡翠。朔弥と過ごした3ヶ月でこいつは性格も大人しいし1回言われたら直ぐに理解する賢いヤツだからさ」 そう言って父さんはお父様の背中をばしっと叩いた。すかさずお父様はせき込み奥様と父さんはあたふたしているのを見ていた。 何も感情のこもって無いガラスの様な瞳であの時私は一人だけこの空間に取り残されたいる気がした。 すると頭の上から「うしゃしゃん」と声が聞こえた。 上を見上げるとさっきまで寝ていた朱雀様が大きな目を開けて私の方に手を伸ばしていた。 突然変異のアルビノである白い髪に赤い瞳。 こんな姿の上、オメガである自分自身が大嫌いだった。 「ま〜、うしゃしゃんうごきゃない」 平然と落ち着いたままの朱雀様が奥様に尋ねていた。どうしても幸せそうな雰囲気に慣れてなくて気持ち悪い。 実の両親からは居ないモノとして扱われてたのでこう言う時、どうしたら良いのか分からなかった。 「あれれ?朱雀が初対面の人に大泣きし無い。めっずらし〜」 朱雀様の頭をわしゃわしゃ撫でる奥様に朱雀様が身体をもぞもぞ動かして何か訴えている。 「うしゃしゃん、うしゃしゃん」 うさぎと言いたい様だけど上手く発音できない朱雀様に父さんとお父様は「お可愛いらしい!」ともだえている。 「朱雀!」 奥様がスルリと腕から朱雀様を落としてしまった。叩き落とされ「あぶっ」っと声をあげた朱雀様はふらふらと立ち上がり、私の目の前にてとてと歩いて立ち止まる。 「うしゃしゃん。うーね、すーじゃってゆうの。うしゃしゃんは?」 なにこの生き物何を言っているのか分からない。しかもさっきから抱き付いてきて何がしたい?さっぱり分からない。 「父さんお父様。朱雀様が理解不能です。申し訳ございませんが通訳を」 うしゃしゃんコールの鳴り止まない中で。私は両親に助けを求める。 それは意外のある人物からの助言だった。 「それはだな朱雀は自己紹介をしてアルビノっ子の名前を聞いてんだ」 「お帰りなさい」 奥様がふわりと笑顔になる。それもそうだ、旦那が1ヶ月の海外出勤から帰って来たのだから。 「お帰りなさいませ旦那様」 父さん達が深々とお辞儀する。 このキラッキラッした金髪の紳士がこの屋敷の主人霧城サトル・アルフォード。 「このアルビノっ子が隆文と翡翠の養子?人形みたいに肌が白くて女の子みたいだな。たしかオメガだっけ?」 「そうでございます旦那様。名前は朔弥歳は5歳です」 お父様が旦那様のコートを脱がしてハンガーにかけるとテーラード姿の英国紳士の雰囲気がいっそう似合う。 旦那様がしゃがんで朱雀様に「朱雀、パパが帰ってきたぞ」と言っても私にべったりで見向きもしない。 まだうしゃしゃんコールの鳴り止まない中で旦那様が奥様にふらふらと寄りかかって「朱雀はパパの事なんか見向きもしない。これは反抗期?家の可愛い朱雀がぁ〜」奥様はよしよしと旦那様をなだめている。 それよりこの私にべったりの朱雀様だ。 「朱雀様、私の名前は朔弥と申します」 「さくぅ〜?」 「はいそうです」 「さくぅはすぅのおともだち!」 朱雀様のお世話係の予定だから良いのだけど、お腹を頭でグリグリして懐かないで、地味に痛い。 「父さんお父様朱雀様を何とかして欲しい。この体制は痛い」 「ごめんね朔弥君」 べりっと朱雀様を奥様がはがしてくれた。 が、しかし予想外の展開が待っていた。 「いやぁ〜さくぅ〜さくぅ〜」 離されたとたんに朱雀様が大泣きしてなぜか私を求めている。 旦那様がおもちゃで気をそらそうとしてもダメ。奥様があやしてもダメ。 しだいに大きくなる鳴き声。ああ目眩がする。 「うーんごめんね朔弥君」 といきなり朱雀様を私に託す。とたんに泣き止む朱雀様。 「う〜う〜」息を荒くする朱雀様だけどしだいに大人しくなって、寝てしまった。 えっどうすんのこれ。服をぎゅっと握りしめて眠る朱雀様。幼児の力は強い、無理やり手をこじ開けて服から離そうとしてもダメだった。 「父さん朱雀様が離してくれません。どうしますか?」 「どうしますかって朔弥すっごい他人事の様に言ってさ。もう一緒にお昼寝でもしたらどうだ?奥様それで良いですか」 午前中なのにまた寝ろと父さん無理もたいがいにして欲しい。 「良かった。家の使用人に預けても朱雀大泣きでどうしようも無かったし。朔弥君とまだ年齢近いし世話係としてはばっちりだね。パパは朱雀が気に入った子が世話係になってくれて嬉しい」 旦那様までもう私を助けてくれない。 このままかなり早いお昼寝?むしろ眠たくないのだけど。 霧城家の朱雀様担当世話係が本格的に決定した瞬間であった。

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