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第4話

この屋敷はコの字型の屋敷で中央館はベーター東館にアルファ西館にオメガと住む場所をきっちり別れていた。 離れの別館には番いになった者や特定の既婚者が住んでいた。屋敷の主人である霧城のお二方や朱雀様もここに住んでる。 朱雀様は17歳高校2年。私こと朔弥は21歳。 通信制の大学には卒業済みで専属家庭教師が居る朱雀様の課題のお手伝いをたまにして、本業の霧城家の薬剤研究者でもある。安価に開発できたオメガ専用の発情期抑制剤を特許にさりげなくその道の有名人であったりもする。 でも私はオメガだから発情期対策にいつも抑制剤をジャケットの内ポケットに忍ばしている。 昼過ぎまで研究室のラボで仕事して休憩室にてのんびり本を読んでいたらキィーと扉の開く音がして、視線を向ければお父様だった。 「朔弥、スマホ自室に忘れてたでしょ?」 そう言われて白衣の上から胸ポケットなどあらゆる場所をペタペタ触ってみた。 うむやはり無い。 「無い」 お父様がはいっとスマホを手の上に乗せた。 とたんに着信音が聞こえ、慌ててスマホを耳に当てた。 「ようやく繋がった。朔弥に何かあったのかと思って心配しただろうが」 朱雀様の声だ。少し乱暴な口調で言われて自分のミスにふがいないと感じた。 「申し訳ありません朱雀様。どの様なご用件でしょうか」 「素っ気ないなぁ、今どこに居る?」 「ラボの休憩室です自室に忘れてたスマホをお父様が届けて下さいました」 「やっぱり頼りになるな翡翠さん。朔弥も俺の執事でもあるから電話にはすぐに出れる様にしておく事。それと帰りはいつもの溜まり場に居るからそこに17時に迎えに来る様にしててよな」 「かしこまりました。ではもうすぐ学校の昼休みが終わりますので失礼いたします」 「あっちょい待ち」 「他に何か?」 「時間ギリギリまで朔弥の声聞いておきたいなとか」 「自宅にお戻りになられたらずっと聞けるでしょう」 「何だか今は朔弥の声を聞いていたい」 「こんな感情の欠けた人形と話していてつまらないと思いますが」 「朔弥は気づいて無いだけだって!使用人のアルファなんてずっと朔弥の事見てる人だって居るし。朔弥は魅力的だよ」 朱雀様に怒られた。ここの使用人のアルファは俺の事が珍しくて見てるだけなのに。この間は兄弟のアルファに二人がかりで頰をむにむに触られて表情筋硬いや筋肉死んでるとか凄い言われようだったりしたのに。 「落ち着いて下さい朱雀様。そう言っていただけるのはありがたいですが、もし襲われても大丈夫な様にSPの訓練もしております。首にはキチンとチョウカーで覆っているではありませんか?」 「朔弥には好きな人いる?」 「いません」 「あははは朔弥らしいや。俺はさ昔からずっといるんだよ、好きな人が。でもその人はずっと一人ぼっちだと思ってて、でも周りの人からどれほど大切に思われているのかしらないんだ」 「そうですか世の中にはそう言った方もいるでしょう」 「でも俺はさその人にその事を知ってもらってさ、もっと自由に生きていて欲しいんだ」 「そう言った話でしたら専門家をお呼びしますので聞いていただけたらどうですか?」 「誰でも良いって訳じゃ無いんだ俺は朔弥に聞いて欲しいんだ!」 「すみません時間なので切ります」 ツーツーと電話が終了した音が聞こえてホーム画面を見ればメールと着信数が凄かった。 「相変わらず素っ気ないね朔弥。朱雀様も大変だね。わざわざこっちに連絡してきて、要件が朔弥どこに居る!だもの。それほど朔弥の事心配してたのにね」 「お父様から見て俺の朱雀様の対応が素っ気ないと言われると本当にそうかもしれない。人の感情にうといからでも、悪意には敏感だ。問題は無い」 問題は無いんだ。 たとえ朱雀様が電話を無理矢理切る前に聞こえた声が耳から離れられない。 朔弥のばか 弱々しくそう聞こえたその声の理由を俺は知らない。

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