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第10話
瞬く間に広がったベビーブーム。
料理長を始めにどんどん離れの屋敷に引っ越す人多数。
あー今日も空が眩しい。
サングラス越しにも眩しいこのテラス。
雪降ったしね。イングリッシュガーデンが真っ白に染まって、太陽光が反射してさらに眩しい。
そっと首の後ろに結ばれたゴム紐を解いてみた。ばさりと広がる真っ白な髪。
長くなったな〜とかかんがえつつ腰まで伸びた銀髪を摘んで眺めていた。
「朔弥、そんなとこにずっと居て風邪引くぞ」
振り向きざまに上からバサッと上から何か覆い被さり、暖かな布が落ちて来た。
「これは、ブランケット?」
「朔弥すげー冷えてんじゃん。ほら室内に行くぞ」
朱雀様は私の手を取ってスタスタ歩いて行く。
ちょうど同じ位の身長になった朱雀様。
いつの間にか成長なさっていたのですね。
そんな事を思いながら大人しく廊下をついて行った。
そして、屋敷の中央。
アルファもオメガも利用できる談話室(朱雀様専用)に着いた。
簡易様のキッチンがあって「大人しく朔弥は座っておく」と言いつけられたので仕方なく二人がけのソファーに座った。
「はい、ココア」
「有難う御座います、朱雀様」
自分の分も作って、私の隣に座った。
ほかほかするマグカップに暖かいな〜
とか考えていると、朱雀様は話しを切り出した。
「朔弥は大丈夫か?」
「えっ?」
「その、翡翠さんに子供ができたって」
ああ、そんな事か。そんな聞きにくそうにされても困ります。
「お父様と父さんのかねての願いだった子供の誕生です。喜ばしい事意外何も無いでしょう」
今朝のあの二人の姿。本当の夫婦なんだなって。
あれ?だったら私は?
私は何なんだろう。
ずずっとココアをすする私は義両親の事について考えてみた。
「私は、誰かに必要とされているのでしょうか?」
「はぁ?何言ってんだ朔弥」
おっと、つい思っていた事が口に出てた。
「朔弥、とりあえずマグカップをテーブルの上におけ」
いつもと違う雰囲気の姿に途惑う私だったが、余りにも真面目な朱雀様の声に従う。
「どうしてそんな他人事の様に言えるんだよ!」
とっさに朱雀様は私をソファーに押し倒す。
さっきゴムを外した髪がふわりとソファーに広がる。背中が痛いとかその時思えなかった。
だって、朱雀様はどうしてそんなに泣きそうな顔をしているのでしょうか?
「朱雀様涙がー」
そっと朱雀様の目元にシャツの裾をあてがう。
「好きなんだ、ずっと前から」
「えっ?」
涙を拭いていた腕を掴まれてそう言われた。
今、朱雀様は何て言った?
ぽかんとした顔をした私に朱雀様はもう一度言った。
「俺はガキの頃からずっと朔弥の事が好きだったんだよ!」
こんな時、どうして良いのか分からなかった。
でも朱雀様は私のせいで苦しんでいるのは、何となく分かった。
体が動かない。まるで私は創作標本みたいに体を針で刺された様に固まっていた。
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