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押さえつけた矢車の体を、松葉瀬はそのまま、遠慮容赦なく揺さぶった。
『んあ、あっ! くる、し……ん、ふあ、っ!』
『テメェは自分のことを、俺の番になれるほど高尚な人間だとでも思ってんのか、あァ? テメェは、俺の憂さ晴らしに付き合うだけの……都合のいいオナホだ……ッ!』
アルファの本能なんかに、屈しない。
仮に、いつか屈してしまう日が来たとしても……その相手が、矢車だなんて。
そんなこと、あってはならないのだ。
オナホだと言い付けられた矢車は、体を激しく揺さ振られながら呻く。
『なん、ですか、それ……っ! 都合のいいオナホ、だなんて……そんな、んっ! ……そんな、のって……っ!』
矢車の後孔に、深々と挿入された松葉瀬の逸物。
それが不意に……キツく、締めつけられた。
『――そんなの、ボク……興奮しちゃいますよぉ……っ!』
矢車の絶頂が、近い。
そう察した松葉瀬は、矢車のナカを遠慮容赦なく蹂躙し始める。
『この、クソマゾが……ッ!』
『あっ、ぁあ、っ! はげ、し――ん、やあ、っ! ボク、マゾじゃ……あ、ぁんっ!』
濡れた後孔が犯される度、淫らな水音が部屋に響く。
『だめっ、センパ……っ! ボク、んあっ! ボク、もっ、イく……っ!』
『そうかよ……ッ! なら、ケツだけでイってろ、ドヘンタイ……ッ!』
『ぁあっ! 奥、そんなにゴリゴリしちゃ――ふあっ、ぁああ、っ!』
矢車の、最奥。
ゴリッと、穿つように突き挿れた松葉瀬の逸物から……熱い劣情が迸った。
その熱を受けて、矢車も体を硬直させる。
『あ、ついぃ……っ。センパイの精子……お腹の、奥まで……ん、っ』
くたりと脱力した矢車は、乱れた呼吸のまま……幸福そうに、そう囁いた。
ホテルのベッドで矢車は、並ぶように寝転んだ松葉瀬へすり寄る。
『オメガに誘われてまんまと抱いちゃった、カワイソウなアルファセンパイ。……ふふっ、楽しいなぁ……っ』
『死ね、マゾビッチ』
『ボクはマゾじゃないですよぉ。精神的苦痛が快感なだけで、物理的に痛いのは嫌いですもん』
『分かんねェわ、そんなさじ加減』
腕にまとわりつく矢車を引き剥がそうと、松葉瀬は身じろいだ。
しかし、矢車の一言で……動きを止める。
『――それと……ボクが死んじゃったら、センパイはひとりぼっちになっちゃいますよぉ?』
動きを止め、松葉瀬は隣に寝転ぶ矢車を見た。
『気持ち悪い猫かぶりが必要無い相手……ボクくらいでしょう? ボクなら、大嫌いなセンパイの愛玩動物になってあげられます』
『……愛玩動物、ねェ?』
『はい。……性奴隷の方が、お好みですか?』
『くだらねェ』
もう一度、矢車が松葉瀬の腕にすり寄る。
『愛玩動物でも、性奴隷でも……本当に、救われなくて、報われない。あぁ、本当……どうしてこんなに最高で、絶望的なんでしょう……っ?』
恍惚とした様子で、矢車が噛み締めるように呟いた。
――馬鹿馬鹿しい。
そう思った松葉瀬は、自身にすり寄る矢車を……振り払う気にも、なれなかった。
1章【運命的で偶発的、されど必然的な出会い】 了
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