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ふわり、と。
甘い香りが、松葉瀬の鼻腔をくすぐった。
「とんだ、淫乱クソビッチだな……お前」
胸の突起を甘噛みし、松葉瀬は囁く。
矢車の後孔に収まる松葉瀬の逸物が、きゅっと、締めつけられた。
「ん、あ……っ! ……じゃあ、センパイはドヘンタイなクソヤリチンですねぇ……っ? ん、っ!」
「相変わらず、可愛げのねェ奴」
「ぁ、ん……っ」
ゆっくりと、腰を引く。
そうすると矢車は、切なそうな声を漏らした。
「な、んです……かぁ? その、つまんない動きぃ……っ?」
「あ?」
「センパイ……まさか、童貞なわけ……ない、ですよね……っ?」
素直に『物足りない』と言えばいいのに。
矢車は酔っていても、相変わらずだった。
松葉瀬は矢車の膝を抱え直す。
そして、気丈に微笑んでいる矢車を、見つめ返した。
「辛いかと思って、優しくしてやったんだがな」
「セン、パイ……っ?」
矢車が驚いたような顔をしたのも、束の間。
「気持ち悪いこと、言わないでもらえますかぁ……っ?」
矢車の視線が、嘲笑するようなものに変わる。
その様子がどことなく面白くない。
松葉瀬は一切の遠慮もせず、腰を突き動かす。
「ひっ、ぁんっ!」
矢車の口から、大きな声が漏れ出る。
声だけでも十分に伝わるくらい、矢車は体を強張らせた。
全身で『驚いた』ということを、松葉瀬に伝えたのだ。
「ハハッ! 随分と、女々しい声を出すんだなァ? ビッチさんよォ?」
「うる、さ――ぃ、あっ! やっ、ゴリゴリしな、あっ!」
強気で、気丈に振る舞っていた矢車の様子が一変。
松葉瀬が動く度、体は律儀に反応し。
悪態を吐こうとする口からは、妙に甘ったるい声が漏れ出る。
目を閉じ、眉を寄せ、体を快感に震わせながら……矢車は嬌声のような声を漏らす。
そんな矢車が、松葉瀬の目には。
――今まで抱いた、どの女よりも……マシに映った。
「あっ、んんっ、あっ! やだぁ、センパイっ!」
「『ヤダ』ねェ……?」
浅いところまで引き抜き。
躊躇無く、奥まで突き挿れる。
「ふぁあ、っ!」
矢車の後孔は、随分とこなれているようだ。
一年間、松葉瀬は矢車を犯し続けたのだから……当然だろうが。
矢車は奥を突かれると特に、高い声を出して反応する。
「俺には、お前が嫌がってるようには見えないんだけどなァ?」
「なに、言って……っ! イヤに、決まってるじゃないですかぁ……っ! こんな、ぁんっ! 乱暴で、獣みたいな、犯され方ぁ……っ!」
暴言を吐きながらも、我慢できずに漏れ出ている喘ぎ声。
そのことに、矢車自身は気付いていないのだろうか。
矢車が、閉じていた目を開く。
「あ、ふあ……っ! ……あ、ははっ! くふ、ふふふっ」
開かれた瞳はすぐさま、愉快気に細められた。
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