43 / 76

5 : 8 *

 ふわり、と。  甘い香りが、松葉瀬の鼻腔をくすぐった。 「とんだ、淫乱クソビッチだな……お前」  胸の突起を甘噛みし、松葉瀬は囁く。  矢車の後孔に収まる松葉瀬の逸物が、きゅっと、締めつけられた。 「ん、あ……っ! ……じゃあ、センパイはドヘンタイなクソヤリチンですねぇ……っ? ん、っ!」 「相変わらず、可愛げのねェ奴」 「ぁ、ん……っ」  ゆっくりと、腰を引く。  そうすると矢車は、切なそうな声を漏らした。 「な、んです……かぁ? その、つまんない動きぃ……っ?」 「あ?」 「センパイ……まさか、童貞なわけ……ない、ですよね……っ?」  素直に『物足りない』と言えばいいのに。  矢車は酔っていても、相変わらずだった。  松葉瀬は矢車の膝を抱え直す。  そして、気丈に微笑んでいる矢車を、見つめ返した。 「辛いかと思って、優しくしてやったんだがな」 「セン、パイ……っ?」  矢車が驚いたような顔をしたのも、束の間。 「気持ち悪いこと、言わないでもらえますかぁ……っ?」  矢車の視線が、嘲笑するようなものに変わる。  その様子がどことなく面白くない。  松葉瀬は一切の遠慮もせず、腰を突き動かす。 「ひっ、ぁんっ!」  矢車の口から、大きな声が漏れ出る。  声だけでも十分に伝わるくらい、矢車は体を強張らせた。  全身で『驚いた』ということを、松葉瀬に伝えたのだ。 「ハハッ! 随分と、女々しい声を出すんだなァ? ビッチさんよォ?」 「うる、さ――ぃ、あっ! やっ、ゴリゴリしな、あっ!」  強気で、気丈に振る舞っていた矢車の様子が一変。  松葉瀬が動く度、体は律儀に反応し。  悪態を吐こうとする口からは、妙に甘ったるい声が漏れ出る。  目を閉じ、眉を寄せ、体を快感に震わせながら……矢車は嬌声のような声を漏らす。  そんな矢車が、松葉瀬の目には。  ――今まで抱いた、どの女よりも……マシに映った。 「あっ、んんっ、あっ! やだぁ、センパイっ!」 「『ヤダ』ねェ……?」  浅いところまで引き抜き。  躊躇無く、奥まで突き挿れる。 「ふぁあ、っ!」  矢車の後孔は、随分とこなれているようだ。  一年間、松葉瀬は矢車を犯し続けたのだから……当然だろうが。  矢車は奥を突かれると特に、高い声を出して反応する。 「俺には、お前が嫌がってるようには見えないんだけどなァ?」 「なに、言って……っ! イヤに、決まってるじゃないですかぁ……っ! こんな、ぁんっ! 乱暴で、獣みたいな、犯され方ぁ……っ!」  暴言を吐きながらも、我慢できずに漏れ出ている喘ぎ声。  そのことに、矢車自身は気付いていないのだろうか。  矢車が、閉じていた目を開く。 「あ、ふあ……っ! ……あ、ははっ! くふ、ふふふっ」  開かれた瞳はすぐさま、愉快気に細められた。

ともだちにシェアしよう!