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矢車は断続的な喘ぎ声を漏らしながら、突然。
一人で、笑い出した。
可笑しそうに目を細め、自分を犯している相手……松葉瀬を見上げて。
満足そうに呟きながら、笑い続ける。
「センパイが、センパイがぁ……ボクのこと、犯してるぅ……あははっ、あは、ん……っ! ふふ、あっ!」
「喘ぐか笑うかどっちかにしろや、この酔っ払い」
「あはは、ぁん……っ! だってこんなの、んっ! 笑わないなんて、ムリですぅ……んぁ、っ!」
矢車の手が、松葉瀬の着ているワイシャツへ、ゆっくりと伸ばされた。
そのまま矢車は、ワイシャツを握る。
「ひあっ、んっ! ちょっと前まで、一緒に……んっ! ご飯、食べててぇ……あっ、そのままぁ……ボクのこと、犯してぇ……っ!」
矢車の口角が、ニヤリとつり上がった。
「こんなに……サイアクで、絶望的なこと……感じないわけ、ないんですよぉ……んんっ、あはは……っ!」
矢車が話している最中も、松葉瀬は抽挿を止めない。
矢車も矢車で、話すのをやめようとはしなかった。
「あっ、んっ! センパイ、センパイぃ……っ! ボク、考えれば考えるほど……体が、熱くなってきてぇ……っ! ひゃん、やぁ、っ!」
まるで、縋るように。
ワイシャツを掴む手の力が、更に強くなる。
恍惚とした表情で笑っているくせに、矢車の逸物は……はち切れんばかりに、勃起していた。
後孔の締め付けも増していき、松葉瀬のペニスをキツく締め上げてくる。
松葉瀬は矢車の締め付けに促されるまま、何度も何度も最奥を狙った。
「あんっ! あっ、あぁ……っ! セン、パイぃ……! 出ちゃ、出ちゃいます……っ! そんなに、奥ばっかり……だめぇ、っ!」
首を反らせた矢車のナカが、更に強く締まる。
矢車の声には、一切の余裕が無い。
そして……余裕がないのは、松葉瀬も同じだ。
――お互いに、限界が近かった。
「クソビッチ……ナカに、出すぞ……ッ」
松葉瀬が、低く呻く。
すると、矢車が慌てたように松葉瀬を見上げる。
「やっ! ナカ、ナカはイヤ……っ! ダメ、センパイっ! 抜いて、抜いてぇ……っ!」
『抜いて』と言うくせに、矢車は抵抗しない。
後孔は、ギュウギュウと痛いくらいに松葉瀬のペニスを締め付けている。
――おそらく、言葉だけの拒絶。
「便器は黙ってろ……ッ!」
「やだ、やだぁ……っ! あっ、イヤ――あっ、ぁあっ!」
松葉瀬が、矢車のナカに射精するのと。
矢車が、上体を仰け反らせて射精するのは。
ほぼ、同時。
ドクドクと、矢車のナカに精液が注がれる。
「あ、ついぃ……やっ、あぁ……は、はぁ……っ」
逸物に触れることもなく、後ろに与えられた快感だけで、矢車は射精した。
松葉瀬が着ているワイシャツと、脱ぎかけだった矢車のワイシャツに、精液が飛んでいる。
「はぁ……う、うぅ……センパイ、酷いですよぉ……っ」
射精し切ったペニスを、矢車の後孔から引き抜く。
それにさえ体を震わせながら、矢車は涙で濡れた瞳を、松葉瀬に向けた。
矢車の秘所から、白濁とした液が溢れる。
「こんなに、いっぱい……クズセンパイの熱い精液、ボクのナカに注がれて……本当に、絶望的ぃ……っ」
矢車はそう囁き。
幸福そうに、微笑んだ。
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