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 予想外の告白に、松葉瀬は一度……矢車の後孔から逸物を引き抜く。  そして、シーツに顔を埋めた矢車の体を反転させた。 「うわっ! ちょ、やだ、センパイ……っ!」 「お前、去年から俺のこと好きだったのか?」 「マヌケな顔晒さないでもらえますか!」 「いいから答えろよボケナス!」  松葉瀬がジッと見つめると、矢車は顔を逸らす。  しかし、話さないと解放してもらえない。そう悟った矢車は、ポツポツと言葉を漏らした。 「……ボク、正直……そこまで、オメガに対して悲観的に生きてなかった方ですよ。そりゃ、オメガとして生まれたくなかったですし、オメガってだけで否定されたりするのは、辛かったですけど……」 「あぁ」 「でも、オメガの中でもボクは特殊なくらい……楽観的に生きてきたつもりだったんです」  シーツから手を離し、矢車は松葉瀬の背に腕を回す。 「でも、オメガじゃなかったらなって……考えてました。会社の面接でも、イヤな顔されましたし……ヤッパリ、オメガにはなりたくなかったです。話したこともない相手に、たかが第二の性だけでバカにされるのなんて、面白くないでしょう?」 「だな」 「ふふっ。……でもね、センパイ。センパイが、ボクに運命って言葉の意味をくれたんです」  そう言い、逸らしていた視線を、松葉瀬に向けた。 「センパイがアルファだったからこそ、ボクはオメガで良かった。この人の番になれるかもしれないって、そう、ポジティブに考えられたんです。……逆に、センパイがアルファなら……ボクはオメガじゃないとイヤでした。そのくらい、センパイはボクにとって特別な人だったんです」  それは、普段の矢車からは絶対に出ないような言葉たちだ。 「センパイが弱くて、カワイソウな人でよかった。……だって、強い人にはオメガとか番なんて心の支え、要らないでしょう?」  矢車にとって、オメガというのは……自分の中の、付属品。  それを活用できるのなら、それはそれでいいのかもしれない。それが、矢車にとっての第二の性。  松葉瀬は矢車を見つめ、そして、目を閉じた。 「……マジでお前って、趣味悪いな」 「それ、お互い様じゃないですかぁ?」 「あぁ、お互い様だな」  目を開き、目の前にいる番を見つめる。 「ボクたちってきっと、初めから二人一緒じゃないとダメだったんですね」 「こっぱずかしいこと言うなよな、クソガキ」 「ふふっ。ムードのないセンパイ、大嫌いでぇす」  矢車は松葉瀬を見つめ、口角を上げた。 「ねぇ、センパイ……ラブラブえっち、しませんかぁ?」 「クソ萎える表現だな」 「とか言いながら、勃たせてるじゃないですかぁ?」 「テメェは何回もイッてるだろォが、俺はまだ一回もイッてねェからな」  矢車の膝を抱え、松葉瀬も笑う。 「……続き、するぞ」  後孔を押し開くように、松葉瀬が逸物を埋め込む。  矢車は体を小さく震わせながら、頷いた。 「……っ、責任……とってください」 「その台詞の方が、さっきのよりは幾分か燃える」 「素直なセンパイ、ゾッとしますぅ」 「本音を言ったら困るだけじゃなく、ゾッともするのな。それも覚えとくわ」  目を閉じた矢車に、松葉瀬はもう一度だけ……キスを落とす。  そのまま、松葉瀬は矢車をシーツに押し付けた。

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