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◎ロマンチスト

「なあ!伊澄(いずみ)!見たか昨日のテレビ!」 「テレビ?」 「そう!オカルト特集!!」 「…興味ない。」 「昨日のはやばくてさ〜。俺もいつかフリーメイソンに入会してぇ〜!」 「はいはい、フリーメイソンね。すごいよね。」 「あ!お前まだ真の凄さを知らないだろ! もうほんと、凄いなんて言葉じゃ足りないくらいやばいんだからな!」 なんだそれ。凄いのかやばいのかどっちなんだよ。 俺の彼氏は大のオカルト好きだ。 元々真尋(まひろ)が、都市伝説やオカルトが好きだってのは知ってた。まあテレビでやってる特集を見るくらいだと思っていたが、実際は進んで調べるくらいのガチなやつだった。 それが表によく出るようになったのは、付き合ってから。 前までは普通にかっこいいやつだと思ってたのに、なんか残念な気持ちでしょうがない。別にいいんだけどさ…… 「あ、そういえばオカルト研究部の入部、考えて…」 「絶対はいらない。」 「えー!なんで!いいじゃん一緒にやろうよ〜〜。」 今はオカルト研究部を新しく作るための部員集めに奮闘しているらしい。 「でもさ、聞いて!同じクラスの三宅が入ってくれるかもしれないんだ…!」 「三宅…?」 そんな奴クラスにいたか?と首をかしげる。 「あ、違う三好だ。」 「ああ、三好。」 確か大人しい奴だよな。 話したことはないけど存在は知ってる。 「部員候補なんだから名前くらい覚えてやれよ。」 「まあまあ、そーゆーこともあるよね。ところで伊澄も一緒に…」 「やらない。」 「なんでさー!彼氏じゃん!それくらい聞いてくれたっていいだろー!!」 「今はそれ関係ないだろ…。」 「ったくケチだな〜。絶対楽しいのに!部室でエッチなことできるかもしれないのに〜。」 「…………あほか。」 「あ!今ちょっと悩んだだろ!」 「悩んでねえよ!引いてんだよ…!」 「またまた〜〜そんなこと言っちゃって〜〜。」 にまにまと人差し指で俺を指して笑う。 「やりたくない事はやらない主義なの。」 「ふーーん。まあもしやっぱり入部したい、ってなったら大歓迎するからな!」 「はいはい。ありがとう。」 普段から俺たちの会話は真尋の趣味の話がほとんど。 はじめはの頃は、ぶっ飛んだ話が多すぎて正直理解できないことが多くて反応に困った。 だが今では聞き流すということを覚えたのだ。 どんな長い話もどんとこい…! 「…………っ……。」 「なんか言った?」 「もう。伊澄ってたまに自分のゾーンに入るよね。 だから、金縛り!よくテレビでやってるじゃん?あれやろうよ。」 今度は金縛りか。 意識してできるもんじゃないと思うけど…。 「あれってなんか脳が誤解して身体の筋肉が強張るみたいな感じでしょ?」 「夢がないなぁ。テレビだけの情報信じちゃダメだって。」 「お前もな。」 「まあまあ、やってみたら分かるって。」 ささ、上がって上がって。とハリのある声で促されて真尋ん家にお邪魔する。 わくわくといった効果音が聞こえそうなほど、眼を輝かせている真尋。一度気になったことは実行しないと気が済まないようで、こうして実験に付き合うのは今回だけじゃない。全部受け入れてしまう俺も俺だが、好きな人のお願いとなれば叶えてあげたくなっちゃうもので。 「はーい。じゃあベッドに横になってください。」 着ていたブレザーを脱いで、ネクタイを緩めて言われた通り、横になった。

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