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「うわっ………。」 勢いよく飛び起きると、真っ暗な自分の部屋にいた。 ばくばくと鳴り止まない心臓の音と、大量の汗がワイシャツを濡らす。 そうだ。俺、真尋に首絞められて、それで……。 思わず、自分の首に手を添える。 捕まれた時の感覚が蘇りそうで、ゆっくりと撫でるようにしか触れられなかったが、特に痛みは感じず、ふぅ。とため息が漏れる。 夢オチか…。と、さらに大きく息を吐いた。 それにしてもリアルな夢だった。 ぐっぱ、と手を動かしながら、現実であることを再確認する。辺りを見渡すと、床に落ちている袋に入ったままの本が目に入る。 そうか。夕方買い物して、そのまま寝ちゃったんだ。 カーテンを閉めていない窓の向こうは真っ暗で、時間を確認すると午前4時44分。なんとなく不吉に感じて急いでカーテンを閉めた。 死ぬのが怖い。あれは真尋の本心なのだろうか。 シャワーを浴びながら先程の夢を思い出す。 前に真尋から聞いたことがある。夢はその日あったことを整理するだけじゃなくて、自分以外の誰かを強く思うと、夢に相手が出てきたり、逆に自分がその相手の夢に出てくることがあるらしい。 聞いた時はへぇ…。くらいにしか思っていなかったが、実際に起きると割と信じちゃうもんだな。 でもいくら夢だからって人の首締めるか普通。あいつの中で普段俺は一体どんな扱い受けてんだ。 今日学校に行ったら真尋が考えていること、全部問い出してやる。 部屋に戻ると、カーテンの隙間から朝日が射し込んでいた。時間もいい位で、準備を始めると足に昨日買った本が当たった。 「でさー、まじで怖かったんだよ。お前。」 今日見た夢を真尋に話すと、そんなことしてたの?夢の中の俺!と楽しそうに笑われた。 「そんなに俺のこと考えてくれてたんだね!嬉しいなぁ。あ!まさか、俺に首絞められたい願望があった?」 「あほか。」 夢の中ほどではないが、昨日より顔色が良くなっていることに安心する。冗談を言えるくらいには回復したらしい。 「そういえば昨日、真尋が好きそうな本見つけたんだよ。」 「本?」 「そーそー。落ち着いた時でいいから読んでみてよ。」 少し重たいビニールの袋を鞄から取り出して、真尋に差し出す。 「2冊もあるの?!うわーありがとう!! 人体実験と偉人の死に方、ねぇ。」 「悪い。あんま好きなジャンルじゃなかった?」 「全然!読むのちょー楽しみ!ありがとな!」 ぎゅっと両腕で本を抱きしめる真尋を見て、自然と口元が緩んだ。

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