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チャイムが鳴り授業の終わりを告げる。
今日一日真尋の姿は無く、午前中に連絡を入れたが既読にもならなかった。また本でも読みふけってるんだろう。
教科書やノートを机の下にしまい、ぐっ、と伸びをしながらあくびをしていると、横から「伊澄君。」と声が聞こえた。
そのまま横目で相手を確認する。
詰襟をしっかり一番上まで閉め、ボサッと伸びきった髪の毛。誰だっけ、こいつ。
「真尋くんって今日来てないよね?」
「おう。」
「今日この後、オカルト研究部で神社に行く予定なんだけど、連絡してもらえないかな?」
オカルト研究部と聞いてピンときた。
そうだ、三好だ。そういえば同じクラスの奴が部にいるって言ってたな。
「悪いけど午前中に連絡送ったっきり返ってこねーんだわ。」
「そうか。神社までの地図を真尋くんが持ってるから、俺たち分からないんだよね…。とりあえず今日は中止ってみんなに言っておこうかな。」
真尋は約束をした日に、連絡無しで休むような奴じゃない。三好の話を聞いて、不安な気持ちが徐々に膨らむ。
「俺、真尋ん家行って様子見てくるから。三好の連絡先教えて。」
「わかった…!」
連絡先を交換した俺は、鞄を置いたまま早足で教室を後にした。
真尋ん家までは学校から歩いて15分程の距離にある。
走れば三好らをそんなに待たせる事はないだろう。
もうすぐ冬だって言うのに、全力疾走で走れば汗が滲んできて、着ていた学ランを脱いで小脇に抱えて走る。
こんなんなら、こいつも置いてくりゃよかった…!
10分もしない内に真尋の家に到着した。
ノンストップで走り続けた身体は、湯気が出るんじゃないかってほど熱い。
夕陽が沈みかけて辺りが暗くなってきているのにもかかわらず、真尋の家には灯が点いていなかった。
家にいる、よな…?
そっとインターホンを押すが反応がない。
急ぎだしいいよな。と自分に言い聞かせて玄関の戸を引いた。
「おじゃまします…。」
しん、とした室内に声が消えて行く。人の気配は全く無くて、薄暗く続く目の前の廊下が気味悪く感じた。
「真尋ーいるかー。」
少し大きめの声で呼ぶとがたん、と物音が聞こえた。
音の聞こえた方へ進むと扉が見える。ノックをしてからゆっくりドアノブを引いた。
「……真尋?」
扉から覗き込むように顔を出すと、布団もかけずにベッドにうずくまる真尋が見えた。
「おい、大丈夫か…?!」
すぐに駆け寄って肩を揺さぶった。固く目は閉じられていて、規則正しい寝息が聞こえたことから、ただ眠っているだけだと気づいた俺は、張りつめた緊張がほどけてその場に座り込んだ。
頬を軽く叩いて起こすと、寝ぼけているのかじっと俺を見つめたまま動かない。とりあえず今はそんな状況じゃないと思い、そのまま話しかける。
「オカルト研究部のやつが、真尋が休みだからって心配してたんだよ。今日どっか行く予定だったんだろ?」
三宅のことを話すが返事を返すどころか、再び真尋は目を閉じてしまった。
こいつ…起きる気ねぇな…。
三宅に連絡をしようと、身体から手を離しポケットに手を突っ込んだ時、真尋の手が伸びてきて俺の腕を掴んだ。
「お、ようやく起きたか。」
真尋と目を合わせると、もう片方の手が俺の頬に触れる。
何かを確認するかのように同じ場所を行ったり来たりする手に、自分の手を重ねた。
「……….伊澄……だ……。」
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