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俺の頬を触る真尋の手に、自分の手を重ねた。
「………伊澄……だ…。」
「うん。」
ささやくような声で俺の名前を呼んだ次の瞬間、真尋の両目から涙がこぼれた。
「え、どうしたの。どっか痛いのか?」
「…………っ。」
あやすように肩をさすってやると、ぎゅ、と力強く手を握られる。それに俺も返すように、真尋の手を握る力を強めた。
「何かあったの?」
そう尋ねと首を横に振った。
とりあえず三宅に連絡を入れようと真尋から手を離した。
「あ、三宅。真尋家にいるわ。…うん。多分今日は行けそうにない。……分かった。伝えてお……」
三宅と話している途中で腕を掴まれて、携帯を床に落としてしまった。振り向くと真尋は、上体を起こしてベッドの脇に座っていた。目線は合わせず、自身の膝に乗せている手のあたりをぼんやりと見つめた様子で、ぴくりとも動かない。
落とした携帯をスラックスのポケットに入れ、真尋の横に腰をかけた。
「珍しいじゃん。そんなに弱ってるの。」
ぽん、と背中を軽く叩くと俺の肩に頭を預けてくる。寝癖のついた髪を指で梳かしながら、俺も真尋に体重を預けた。
「……変って思うかもしれないけどさ、」
しばらくの沈黙の後、真尋が口を開いた。
「うん。」
「本当に、自分でも馬鹿だって思うんだけどね。俺、死ぬことばかり考えちゃうんだ。」
聞き覚えのある言葉に、息を飲んだ。
「物心がついた頃からそうでさ、死んだらどうなるんだろとか、今まで死んでいった人たちはどこに行ったんだろう、って。いつか自分もそうなるって考えただけで、どうしようもない怖さが襲ってきてさ……。はは、可笑しいよね。実際死にかけたこともないのに。」
「………。」
「俺、今すごい幸せなんだ。こうやって大切にしてくれる人が周りにいて、伊澄がいる。」
「でも幸せを感じるほどに怖くなるんだよ。いつだって必ずこの気持ちがついてくるんだ。」
真尋は自身の指先を何度も握り直しながら、今まで抱えてきたことを明かしてくれた。それが理由で、オカルトに興味を持つようになったことも。
正直、返す言葉に困った。
昨夜の真尋がちらついて、思いつく言葉全てが、喉元で引っかかって消える。何が正解で、どうしたら彼を救えるのか。
どうしようもなくて、落ち着かない手を握ってやると 「あのさ、」と再び真尋が口を開いた。
「今、俺が生きてるって証明して欲しい。」
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